2023年8月30日水曜日

ベートヴェン ピアノ協奏曲第3番_タッキーノ

 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37を聴く。

ガブリエル・タッキーノ;クリュイタンス、ベルリンフィル(1962年録音:イエス・キリスト教会)にて。ともにフランス系によるベートーヴェン。(クリュイタンスはフランス系ベルギー人)タッキーノはよく知らないが、プーランクのお弟子さんらしい。クリュイタンスは、フルトヴェングラーの味が染みついたベートヴェンの録音を避けたカラヤンからベルリンフイル初のベートーヴェン交響曲全集を勝ち取った兵<つわもの>。演奏は、This is イン・テンポ。3番のもつベートヴェンの暗さを全く感じさせない美しい演奏。これほど美しい3番は他に聴かない。タッキーノのタッチは、力強さも柔らかさもどちらも兼ね備え、まさに小細工なしの正統派。クリュイタンスのサポートに支えられ、まさに隠れた名盤でした。



2023年8月26日土曜日

ブラームス ピアノ協奏曲第1番_ワイセンベルク

 ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調OP.15を聴く。カラヤンのお気に入りであったがゆえに、持ち味が十分に発揮されているとは言い難かった不遇のピアニスト。そんなワイセンベルクが、1972年にジュリーニ:ロンドン交響楽団と組んでの録音。皮肉にもカラヤンがたぶん演奏も録音もしなかった、この曲。速度表記のない第1楽章だけにジュリーニにはぴったり。もちろん冒頭からジュリーニの男気炸裂。いつもながらのゆったりテンポ、風神雷神のような豪快なティンパニー!!ワイセンベルクも気合十分。スマートさをかなぐり捨てて男気と男気の勝負!でも1音1音の美しさはさすがだ。展開部、ワイセンベルクの打鍵に刺激されジュリーニが吠えてるぞ。圧巻の嵐の第1楽章だ!!第2楽章、低弦部の重厚さの中、ワイセンベルクのリリックな音色は、やさしく少女の髪をなでるかのようだ。中間部の強奏ではクリアの音で気持ちの高まりを思わせる。終楽章、出だしのバロック風のピアノのはワイセンベルクの十八番!ラストへの怒涛の競演も凄味も聴きどころ。ロマンチシズムたっぷりの名演!しかし録音悪し( ノД`)シクシク…名盤ではなし!!



2023年8月12日土曜日

R・コルサコフ シェラザード_オーマンディ

 R・コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」、オーマンディ:フィラデルフィア管、(V)アンシェル・ブルシロウ(1962年録音)で聴く。

煌めく金管群の巧さ。柔らかな弦楽群の音色。まさに往時のフィラデルフィア管にまさにぴったりの曲。ブルシロウのヴァイオリンの響きはある時はチャーミングに、ある時は野性味あふれる使い分けが良き。トランペットのギルバート・ジョンソンのトリルも聴きもの。第3曲は、白眉だ。弦楽群は、変に甘くなく、それでいてよく歌う。ヴァイオリンソロからオーボエ・ホルンとつなぎ、ハープのアルペジオを経ての月明かりの夜のような終結。ここが好きです。4曲、メリハリのある金管群、キレのあるパーカッション。終盤手前の疾走感。60年代のフィラデルフィア管は本当に凄味があります。名演とさせていただきます。



シューベルト 交響曲第8(9)番「グレイト」_ケンペ

 シューベルト 交響曲第8(9)番ハ長調 D.944「グレイト」、ケンペ;ミュンヘンフィル(1968年録音:ミュンヘン、ビュルガーブロイケラー)を聴く。

冒頭のホルンの毅然とした音がこの演奏の方針を示す。そして馥郁たる香り漂うオーケストラの響き、良く歌う弦セクション。当時のコンマスは、クルト・グントナーだ。奥行き感と臨場感を感じさせるた両翼配置の効果。推進力を秘めているが、変なアッチェレランドなどせず、インテンポで男気の終結部を奏す。第2楽章は、明快なアクセントでやや早めのテンポで展開。美しく気品あるオーボエ。再現部のアクセントとレガートの対比、劇的な静寂も素晴らしい。3楽章、主部の弦楽群の迫力、トリオでの木管群の鄙びた香りがまたいい。軽く揺れを生み出すケンペの絶妙な棒も魅力だ。白眉は終楽章、早めのテンポでこれでもかと驀進し、まさに息をもつかせないオーケストラ。突進力を持ちながら、弦楽群の刻みに一切の乱れも見せない確かさ。冗長で退屈などと言わせないケンペの見事な統率。終結部も強烈な推進力とパワーを持ちながら、インテンポを貫き通す愚直さ。統率された豪放!まさに名演!!です。


2023年8月6日日曜日

ドヴォルザーク 交響曲第8番_ドラティ

 相変わらず暑い日が続きます。こんな日は爽快な曲でも聴きたい。ドヴォルザーク 交響曲第8番ト長調OP.88 ドラティ、ロンドン交響楽団(マーキュリー盤:1959年録音)を聴こう。

第1楽章序奏は、ゆったりとしたテンポで始まり、フルートのさわやかな音色とともにダイナミックかつ雄渾な第1主題。マーキュリーのシャープな音にずばりマッチ。序奏と第1主題の何気ない対比で曲に吸い込まれてゆく。コーダも思い切りの良さもドラティならではの男気を発揮、素晴らしい。第2楽章は、中間部が好きだ、フルートとオーボエのあとに登場するヴァイオリンソロ。その後のトランペットの高らかな響き。白眉は短い第3楽章か。ドラティは、高速のテンポで小粋に進んでいく。哀愁のト短調と呼ぶべき出だしのワルツはメロディテーラーのドヴォルザークらしい美しさ。中間部のボヘミア風味の哀愁感もたまりません。コーダは、2/4拍子だが、実質は3/2拍子。この曲の主役ともいうべきトランペットがきちんと最後を締めくくる。終楽章、爽快なトランペットのファンファーレとともに序奏が始まり、チェロが主題をゆったりと奏でる。トルコ風の陽気なメロディが入り、半音下げの転調の遊びをまじえ、フィナーレへ。ここで、チェロが変奏曲を滔滔と歌うのも面白い。コーダの急速展開はドラティのまたまた男気が登場。直前のブレーキもこうくるかぁ!やはりドラティの切れ味はそそられます。