2020年2月22日土曜日

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第2番_ブッフビンダー

今日は、我が家のピアノの調律をしに調律師さんがやってきました。この日ばかりは、かみさんが朝からリビングを片付けるのでとても気分のいい日となります。(すぐに元通りになるのですが)。午後のひと時は、ブッフビンダー指揮ぶりウィンフィルによるベートーヴェン ピアノ協奏曲を聴く。
その中から、地味ながら若きベートヴェンのキラキラ感が満載の第2番変ロ長調Op.19をとりあげよう。
作品番号は2番だが、実際は1番にあたるこの曲は、初期ということもありベートーヴェンの中にモーツァルトを感じることができる仕上がりです。編成も、フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦五部とモーツァルト最後のピアノ協奏曲第27番ととってつけたように同じ小ぶりの編成です。
第1楽章、その序奏はまさにモーツァルトそのもの。少し控え目に始まるピアノは、第1主題を軽やかになぞりながら流れるように音の粒を飛ばし、ウィーンの陽だまりによく似合い、幸せな気分にしてくれます。カデンツァは、インヴェンション風に始まり、途中からベートーヴェンらしい豪胆さが現れる。第2楽章、ファゴットを中心に低弦群が序奏を始める。ピアノは、その低弦群の上をリリカルに歩き回り、癒しのメロディを紡いでゆく。やがてオーボエがホルンに支えられメロディラインを奏でるとピアノは伴奏へ。しかしピアノはメロディに戻り、終結部は、まるでオルゴールのような響きを見せ美しい弦楽群と戯れる。そして最後はオーボエとフルートが優しく締める。第3楽章、これと言って特徴はないが、とにかくベートーヴェンらしからぬ飛び跳ねと無邪気なピアノを存分に楽しむべきだろう。愛聴盤は、グルダ+ホルストシュタイン、ウィンフィルですが、今日はこちらで。

2020年2月15日土曜日

モーツァルト 交響曲第36番&38番_シューリヒト

不要不急の外出は避けた方が賢明な今日この頃、自宅で「のんびり」です。モーツァルト 交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」&38番ニ長調K.504「プラハ」を聴く。シューリヒト;パリオペラ座管弦楽団(1963年録音)。まさに説明不要の名演奏。
自分の中では、カンテッリ(PH)の29番、このシューリヒトの38番、ワルター(コロンビア)の40番は、はずせません。


2020年2月8日土曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲全集より11番_リリー・クラウス

やっと2日間の極寒が終わり天気も良く暖かな一日でした。このところ、秋に予定しているプラハ、ザルツブルグ、ウィーンの旅行プランを練っている関係で、精彩を欠くゴルフから戻ったあとずっとモーツァルトのピアノ協奏曲を聴いています。初期から19番くらいまで。
リリー・クラウス、スティーヴン・サイモン&ウィーン音楽祭管弦楽団にて。ウィーン音楽祭管弦楽団という聴きなれないオーケストラは、レコーディングのためにウィーン交響楽団からピックアップされたメンバーで構成されているらしい。かのヨーゼフ・クリップスの薫陶を受けたスティーヴン・サイモンのウィーンの香りのする伴奏を受けてのクラウスのチャーミングなピアノが自在に跳ね回ります。ここでは、あまり馴染みのないピアノ協奏曲第11番 ヘ長調 k.413(387b)を少しご紹介。ウィーンへ出てきたモーッアルトが最初に手掛けたピアノコンチェルト3作品(11-13番)の2曲目です。(12-11-13番が完成順)。
第1楽章、冒頭は主和音の連打で始まり、明るく社交的でウィーンに出てきて嬉しさのあまり闊歩するモーツァルトの姿を思い描きながら聴いています。少しフライング気味に登場するピアノが愛らしい。中間部には、モーツァルト独特の憂いある旋律。カデンツァはモーツァルト自身のものです。
第二楽章、低弦のピチカートで始まりどことなく牧歌的なテーマ。ピアノと弦楽群との掛け合いを経てピアノは徐々に短調にゆらめいていく。少し夢ごこちな中間部を終えた後、どことなく悲しみを秘めたカデンツァ。そして何事もなかったかのように牧歌的に幕を閉じる。
第三楽章、センスの塊で一番好きな楽章。一転して都会的なポリフォニックな主題で始まり、特に味のある低弦群が対位風に旋律を支えるところも聴きどころ。中間部後半の流れるような弦楽群との掛け合いの旋律の美しさに思わずため息。コーダはまるでそっと筆をおくかのように静かに。。。若きモーツァルトの作品群も味がありますね。


2020年2月1日土曜日

ブラームス ピアノ協奏曲第1番_ハンス・ヒリター=ハーザー

注文していたCDがケンタッキー州にあったらしくやっと届いた。予定日より1週間遅れでしたが、着いてよかった。
ハンス・リヒター=ハーザー(P)、クルト・ザンデルリンク指揮、デンマーク放送交響楽団(1979年Live録音)。ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 OP.15を聴く。KONTRAPUNKT(コントラプンクト)というデンマークレーベルのCDです。ちなみに”コントラプンクト”とは「対位法」という意味ですね。リヒター=ハーザーは、生粋のベートーヴェン弾きで、いつもは、ベートヴェンのコンチェルトを聴いているのですが、このCDには、ベト5「皇帝」とこのブラームスの1番が収録されています。
第一楽章、序奏部のティンパニーロールの中、各楽器の響かせ方が抜群だ。テンポもゆっくり目で、ザンデルリンクは単に重厚感だけでなく激しさの中で蠢く苦悩をわずか4分間で描きあげてしまった。それを受け継ぐリヒター=ハーザーの音の粒は、憂いを含んでいながら硬質に煌ていて聴こえるのが素晴らしい。展開部では、ピアノがオーケストラの一部と化す場面とピアノがパッと浮かび上がる場面の二面性をもつこの曲の魅力を存分に楽しみながら聴くことができる。これも協奏曲を知り尽くしたザンデルリンクの成せる業か。曲が進むにつれお互いの峻厳さが増してゆく。何と言ってもリヒター=ハーザーの強打であっても深みと気品あるタッチがこの曲本来以上に格調を高めているのが見事だ。
第二楽章、Adagio。まずは弦楽群とファゴットで始まる曲の冒頭部が堪らなく好きであることを書いておこう。そして再度この組み合わせで楽章を締めくくる。ファゴットに時折感動してしまうブラームスの様々な楽曲において、ここも大事にしてくれているかがポイントだ。リヒター=ハーザーの明確な粒立ちにより変に甘くならず深遠なる世界の創出がされ、中間部の色彩は決して耽美なものにならず・・・これがいい!この曲はショパンでなくブラームスなのだから。
終楽章、激情的なこの楽章においてもリヒター=ハーザーは、微塵も厳格さを失わない。それに合わせるザンデルリンクも変に煽ることをせず、それでいてエネルギッシュさを保ちコーダへ突入する。そしてこれほどシンクロしながら品格あるコーダは他にあっただろうか。「買ってよかったこの一枚」に推薦させていただきます。