モーツァルト 遡って弦楽四重奏曲を聴いていこう。その⑯
弦楽四重奏曲第8番ヘ長調 K. 168。アマデウス弦楽四重奏団(1976年録音)「ウィーン四重奏曲」の1曲目です。この時期(17歳)すでにモーツァルトは、対位法、短調の表現力、そして単に楽しませるのではなく何かを証明するかのような終楽章へと重心が移っている。とりわけ緩徐楽章(2)は、凝縮されたヘ短調への転回により、表現領域格段に引き上げている。また、3拍子のカノンとして楽章を構成しており重大でありながらかくも切実な抒情を見せつけるモーツァルトの非凡さがうかがえる。終楽章、モーツァルトは軽快なロンドではなくフーガを選んでいる。ハイドンの四重奏曲にも見られる「対位法的終曲」への同時代的な関心に連なり、「学識ある」様式を機動力のある室内楽へ織り込んでいる。ある意味模倣的な要素が多分にあるが、モーツァルトが階段を駆け上がる時期であったことは感じられる。

