月に1度は聴きたくなるブラームス「ドイツ・レクイエム」シリーズ。第32回です。
1.クレンペラー 2.サバリッシュ 3.ヤルヴィ 4.ジュリーニ 5.セル 6.コルボ 7.アーノンクール 8.ケーゲル 9.ロバート・ショウ 10.アクサンチュス 11.コッホ 12.ヘレヴェッヘ 13.シノーポリ 14.クーベリック 15.バレンボイム 16.レヴァイン 17.ケンペ 18.マゼール 19.アンセルメ 20.クレツキ 21.シューリヒト 22.ガーディナー 23.ハイティンク 24.アバド 25.テンシュテット 26.メータ 27.ショルティ 28.ブロムシュテット 29.プレヴィン 30.トスカニーニ
31.ザ・シックスティーン
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第32回は、御大を忘れていました。
ワルター指揮:ニュー・ヨーク・フィルハーモニック、ウェストミンスター合唱団、イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)
ジョージ・ロンドン(バス)<1954年12月16日 カーネギーホールLIVE>です。
ワルターには、数多くのドイツレクイエムがあります。
この盤のすぐあとにセッション録音したもの、同じく1952年のNYPとの英語版、1952年にはローマ放送SO.とのライヴ(イタリア語盤)もある。そして、ウィーンPO.との1953年のエディンバラ音楽祭でのライヴ、1947年のBBCとの放送録音、スウェーデン国立交響楽団との1950年ライブなどだ。
第1曲、重く引きずるのではなく、まるで朝の目ざめのような
弦楽の響きの中から、コーラスが始まる。敬虔な歌声の中にどこか暖かみを感じる。早いテンポでありながら、決して薄くなるのではなく、大きな揺れの中でメリハリを持たせ包み込むようなニュアンスにワルターらしさを感じずにはいられない。
第2曲、遠くから少しずつ踏みしめるように近づいてくるオーケストラ。気が付くとすぐそばで、コーラスが重苦しくユニゾンをという出だし。だから、その後の長調の暖かく優し気な囁きに癒される。ワルターの奥行きの深さは、こうした何気ないところにある。「Aber des Herrn Wort」からのアレグロ展開での溌剌さも苦悩から解き放たれた「喜び」の表現を見事に円して見せている。
第3曲、ジョージ・ロンドンの説得力のあるモノローグ。それを緊迫の度を高めつつコーラスが見事に支えている。
そして壮麗なフーガへの直前の雲間が晴れ天へ上るような歌声、渾身のトランペットは見事。持続低音Dに支えられ蠢く主題のコーラスは、決して熱くなるのではないものの、力強く歌い上げる。この3曲は、本当に素晴らしい。
第4曲、優雅な舞曲。その中で七色に変化する表情。ワルターは、意外に大きな音量で力強く駆け抜けている。
第5曲、イルムガルト・ゼーフリートは、綺麗な歌声だが私的には少し明るい&若い。当時まだ20代であるので致し方なしか。
第6曲、第1曲と同様あまり翳りを持たずに始まるが、バスの独唱より厳しさを加え、高速のテンポでスフォルツァンドへ。大フーガにおいてもそのテンポは変わらず、一気呵成に突き進む圧倒的な賛歌の様相です。
ワルターのドイツレクイエムは、さすがの豊かさと深みを随所に感じることのできるものではないだろうか。
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