2020年5月10日日曜日

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」_クレツキ

クレツキ;チェコフィルによるベートーヴェン 交響曲全集より3番ホ長調 OP.55「英雄」(1967年録音)を聴こう。この全集が録音されたのはプラハのルドルフィヌム:ドヴォルザークホールだ。程よい残響とクリアな音の響き。これによりクレツキ率いるチェコフィルの力量の素晴らしさ、解像度と伸びやかさが思う存分発揮されている。チェコフィルと言えばそのシルキーな音色の弦楽群が真っ先に頭に浮かぶであろう。その上、この時代のチェコフィルの管楽群は素晴らしい。英雄と言えば「ホルンの重要性」に議論の余地はないが、シェテフェック率いるホルン軍団の輝きは本物中の本物だ。(この時、ティルシャルも吹いていたのだろうか?もしかして3番ホルンか?)有名なスケルツォのトリオの3重奏。ほんのり遠くから、何の力みもない柔らかさ、それでいてメロディックなハーモニーの3本効果をいともたやすく表現している。adagioのオーボエの憂いある音色も出色だ。ティンパニーの歯切れの良さは、冒頭から感激しっぱなし。第1楽章コーダにおけるトランペットの「俺様」感も印象的だ。Adagioは往々にして引きずるような粘りに辟易する場合があるが、クレツキは各楽器がフーガ風に広がりを見せる場面から金管とティンパニーの最初の頂点へ向けてある意味淡々と紡いでゆく憎らしさ。しかし中後半の低弦群の利き所はしっかり歌うように。終楽章、その変奏曲群は、オーケストラの楽しみ・醍醐味を教えてくれた珠玉の一大叙事詩。木管群の戯れ、とりわけフルートソロの扱い、そしてアンサンブル、ホルンの力感、低弦群のフーガの連携、「まさにオーケストラの宝石箱や!!」。進軍ラッパとともにいざクライマックスへ。

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