フォーレ「レクイエム」。アントニー・ウォーカー&カンティレイション、シンフォニア・オーストラリスにて。1893年ネクトゥー&ドラージュ校訂版使用。この曲は、ブルックナーの交響曲に負けないくらい様々な版があり、各指揮者も結構バラバラで演奏している。4度録音してるコルボなどは、1回目(72年:聖ピエール=オ=リアン・ド・ビュル聖歌隊)2回目(92年:ローザンヌ声楽)は、1900年第3版、3回目(2005年東京ライブ:ローザンヌ声楽)4回目(2006年:ローザンヌ声楽)は1893年ネクトゥー&ドラージュ校訂版。2度録音しているヘレヴェッヘは、1回目(88年:ラ・シャペル)は1983年ラター版、2回目(2001年:ラ・シャペル・ロワイヤル)は、第3版である1900年版を第2稿の校訂者であるジャン=ミシェル・ネ クトゥーが1998年に手直しした1901年版を使用と、同じ指揮者でも版を変更しているから面白い。通常演奏される第3版とこの1893年ネクトゥー&ドラージュ校訂版は、もっとも言われる違いは、フルオケか室内楽かというところだろう。しかしそれ以外にも多々ある。編成で言えば、TimとHpが意外と違うところで登場する。またLibera Meの"Dies irae" に入る前52小節目のHrのリズム(すべて4分音符)など。譜割りもIntroit 24小節目・テナーのパートソロの5小節目<ここは版によりすべて違うので、ここを聴けば何版かわかる>、Offertoire 58小節目・バリトン・ソロなどなど。さて話が横にそれたが私がウォーカー版で好きな個所は、Offertoireの出だし、弦楽の浮かび上がる鮮明さだろうか。全体を通してウォーカーのテンポ設定は極めて「ゆったり目」。コーラスのアンサブルは成熟度が高く、綺麗に揃っている。ソプラノの声も柔らかく落着きがあり、テナーも変な頑張りがなくて良い。ソロのサラ・マクリヴァー(Sp)は、かなり好きな声だ。透き通って伸びのある高音部、柔らかい低音部。テディ・タフ・ローズ(Br)も力強い声。オルガンとの倍音にもってこいの声だ。次回、この曲の説明は、曲自体について書いてみたいものだ。
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