2026年5月7日木曜日

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲_オイストラフ

 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61、ダヴィド・オイストラフ(V)クリュイタンス フランス放送国立管弦楽団(1958年録音)を聴こう。フランス放送国立管弦楽団のしなやかで透明感のある響きが、オイストラフの骨太なソロを優雅に引き立てる。一切の迷いがないボウイングが生む太く艶やかな音色が、大河のような流れを作る。カデンツァはクライスラー版を採用。技巧の完璧さと音楽的な深み。「鋼の意志と絹の音色」と言われたオイストラフの真骨頂!第2楽章;Larghettoは、木管群の音色は柔らかく、オイストラフのヴァイオリンと溶け合う。それでなくても美しい楽章を天上へと導く。アンドレ・セネダによるバソンの音色は、明るく鼻にかかったようで、どこか切なさを帯びたヴィブラートがあり、オイストラフの豊潤な音色と絶妙なコントラストを生んでいる。第3楽章、Rondo (Allegro)は、一転オイストラフの見事なテクニックが、飛び跳ねるロンドのリズムを刻み、力強いダブル・ストップが緊張感を高める。しかし、このコンビは、決して粗野にならず気品を保ちフィナーレへと駆け抜けてくれる。王者の風格!!ちなみにこのヴァイオリン協奏曲は、ピアノ協奏曲に編曲されている。ご存じベートーヴェンのピアノ協奏曲として完成した曲は第1番〜第5番「皇帝」の5曲だが、実は、この編曲を「ピアノ協奏曲 作品61a」として「ピアノ協奏曲第6番」と呼ぶこともある。もう一つある<Hess 15>は未完成。



2026年5月1日金曜日

チャイコフスキー 交響曲第5番_マゼール

チャイコフスキー交響曲第5番ホ短調Op.64,マゼール(C)ウィーンフィル<1963-64録音;DECCA>で聴く。

33歳のマゼールのクリスタルで硬質な、輪郭を発揮させるメリハリのある造形嗜好にウィーンフィルのしなやかで甘美な音色が何故か融合し面白い仕上がりとなっている。

第1楽章冒頭、アルフレート・プリンツのウィンナ・クラリネット暗く、深みがありながらも、芯の通った密度の高い音色から始まる。マゼールの筋肉質でタイトな嗜好に、プリンツの知的でコントロールされた吹き方が、演奏全体の緊張感を高める。

第2楽章、フライベルクのウィンナ・ホルンの芳醇な音色、柔らかく、かつ深みのある音色がマゼールの明晰な解釈の中に絶妙な叙情性を添える。ロレンズのオーボエは、ウィーン・フィルの木管セクションらしい、素朴ながらも気品のある歌い回し。マゼールの端正な造形の中で、ロレンズらによるウィーン伝統の木管の響きは、冷徹な演奏に温かみや「ウィーンの体温」を与える重要な役割を果たしているといえよう。パンチの効いたティンパニの強打も効果絶大。ホッホライナーの「ヤギ皮」ヘッドの独特の響きは、非常に明快なアタックがありつつも、その後の響きにはウィーン・フィル特有の柔らかく深い余韻が残り嬉しい。

終楽章、序奏は中庸のテンポで決して情感に溺れない。オーケストラは、主部になると一気に厚み増し、再現部は輝かしくもある。終結部の弦による「運命動機」も、輝きに溢れ、コーダのヴォービッシュを中心とするトランペットは品位を失わず神々しい。やはり面白い。