2018年10月20日土曜日

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番_ツェヒリン

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 Op.37。
ディーター・ツェヒリン、コンヴィチュニー指揮:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1961年録音)を聴く。
それを確信できる耳は持ち合わせていないが、おそらくライプツィヒのユリウス・ブリュートナー・ピアノフォルテファブリック (Julius Blüthner Pianofortefabrik)のピアノ。ドビュッシーが愛用していた、いわゆる「ブリュートナー」による演奏。高音部に4本目のアリコートを持ち、この4本目の弦はハンマーで打たれることはなく、共鳴させるためだけに張られており、この共鳴によって倍音が増幅されるわけだ。豊かな、そして割れることなくこの上なく柔らかい音。
第1楽章、序奏部のLGOの渋みのある弦楽群と程よく乾いたティンパニーの打撃音の後にツェヒリンの凛として品格のある音が現れる。展開部に進むにつれ、ピアノ音は、どことなく暖かみを帯び、徐々にLGOのオーケストラと馴染みながら木管群との掛け合いを経て、珠玉のカデンツァへ雪崩れ込む。
カデンツァは流れるようなタッチ、煌く高音部の響き、悲しみを抱えながらもどこか暖かみのあるピアノ音、そして後半部に何故か現れる独特のティンパニー。
第2楽章、主調と一切の共通音をもたないホ長調のLargo。
この緩徐楽章におけるLGOの弦楽群の音の紡ぎ出す「温もり」は何とも言えない。そしてツェヒリンの変に甘くならず、それでいて只々美しい音の粒に魅了されずにはおれない。
第3楽章、軍楽風で躍るようなリズミカルなロンド。でもどこかすっきりした明るさをもたないのは属七ゆえか。この章ではファゴットから始まる小フーガが好きだ。ツェヒリンには、力みを感じさせない確かなテクニックと落着きがあり、
「ブリュートナー」の響きと相まって品格ある3番を聴かせてくれた。隠れた名盤としたい。




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