ベートーヴェン「ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲ハ長調 OP.56」を聴く。シュナイダーハン(Vn)フルニエ(Vc)アンダ(Pf)フリッチャイ,ベルリン放送交響楽団。(1960年録音)この演奏の品格の高さを決めているのは、ひとえにフルニエのチェロだということを最初に言っておこう。第1楽章、冒頭はチェロとコントラバス(弱音器つき)の重厚な第1主題、それを受け継ぎ第1ヴァイオリンが第2主題をト長調で奏し、ティンパニーを交えたオーケストラが提示部を締めくくり、フルニエの独奏を迎える。この瞬間にこの演奏の気品が決定づけられる。フルニエの柔らかく美しいその音は特級品だ。サポートのフリッチャイは、低重心の弦楽群、くぐごもった管楽群の良さを引き出す。ピアノのアンダは脇役だが、展開部で少しメロディを鼻歌っぽく歌っているように聞こえるのは気のせいだろうか??第2楽章は短い(53小節)。フルニエが高音部で独奏し、アンダのピアノに支えられ、何とも言えない木管群の音色。シュナイダーハンとフルニエが重なると夢心地の時間が過ぎてゆく。第3楽章、つぎめなく始まる。中間部が聴きどころ。独奏が、ポロネーズのリズムに乗って動き回り絡み合う。コーダに入るとオーケストラも含め一気呵成に終結を迎える。この三重奏の定番と言えば、オイストラフ(Vn)・ロストロポーヴィチ(Vc)・リヒテル(Pf)といったさしずめ、1985年バース・掛布・岡田、1990年の秋山・清原・デストラーデ。3人の名手をそろえカラヤン・BPOがささえるというオールスターの演奏があるが、私はフリッチャイ盤に軍配を挙げたい。フルニエはやはり素晴らしい。
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