2020年8月2日日曜日

マーラー 交響曲第1番「巨人」_アンチェル

カレル・アンチェルのマーラーの録音は、1.5.9番しかない。
いずれも素晴らしい演奏であるが今日は、その中で1番ニ長調「巨人」を聴こう。チェコフィル【1964年録音】。
第1楽章、まず驚かされるのが、弦楽群のAのフラジオレットに乗せて下降するオーボエとファゴットに始まり、登場する木管群の良質の音色、そしてホルンのいかにも牧歌的な響き。チェロの第1主題が始まる頃には、誰もがこのバランスの良い色彩感に魅了されているであろう。そうボヘミアの「朝の野ばらを歩く」姿が明確に見えてくるようだ。またノヴァークのフルートが素晴らしい。展開部のホルン斉奏後の弦楽群の何とシルキーで魅了的なこと。すべての楽器が明確に分離され耳に届けられる。アンチェルの尋常ならざるバランス感覚の成せる業か。第2楽章、低弦による力強いオスティナート・リズムによる心地よいテンポ。中間部の弦楽群の優美さ。第3楽章、コントラバスで始まるフレールジャック。決して重すぎず淡々と。オーボエも巧い。中間部の弦楽群も艶っぽい。第4楽章、激しい中にも美しいと表現したくなるのは、アンチェルの品性の由縁か。(余談だが、展開部で好きな所はハ長調で凱歌を挙げると見せかけてニ長調へ上昇するところ)管楽器を含め、巧みに音量がコントロールされ、決して暴発しない。コーダ直前に徐々にテンポをあげながらコーダ・フィナーレに突入するさまもアンチェルならではの至芸。更に付け加えるなら、ケイマル入団前にもかかわらずトラッペットの巧さ。アンチェルも是非、チェコフィルで5番を録音しておいて欲しかった。



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