モーツァルト 遡って弦楽四重奏曲を聴いていこう。その⑪
弦楽四重奏曲第13番ニ短調K.173,バリリ弦楽四重奏団<1955年録音>この第13番は初期の「ウィーン四重奏曲」とよばれ、そのラスト6曲目にあたる。冒頭のユニゾンから、決して現代のカルテットのような過度なエッジは立てないものの、内省的で深い響きを持って引き込まれます。ワルター・バリリの哀愁を帯びた、しかし凛とした歌い回しが絶品です。第2楽章、長調(変ロ長調)に転じますが、ここでのウィーン風の優美な身のこなし、そして各声部の自発的な対話こそ、バリリ四重奏団の真骨頂か。終楽章、彼らの演奏は、対位法的な構造をガチガチの厳格さで提示するのではなく、4つの楽器がまるで親密な会話を交わすかのように、有機的かつ流麗にフーガを編み上げていきます。技巧の誇示や誇大妄想的な表現とは無縁の、古き良きウィーンの宮廷的な品格と、青春期のモーツァルトの情熱が同居した演奏といえよう。バリリ弦楽四重奏団が、第14番をのぞくハイドンセットを録音しなかったことは惜しまれる。

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