モーツァルト 遡って弦楽四重奏曲を聴いていこう。その⑫
弦楽四重奏曲第12番変ロ長調K.172,アマデウス弦楽四重奏団で聴く。6曲ある『ウィーン四重奏曲』のうちの5曲目。ご存じハイドンの作品20「太陽四重奏曲」の衝撃をダイレクトに吸収しようとした時代です。この曲では、第3楽章のメヌエットが最も顕著です。冒頭、第1ヴァイオリンではなくヴィオラが主導権を握って語りかけ、それに第1ヴァイオリンが応えるという構造になっています。ヴィオラにこのような重要な役割を与えたのは、ハイドンの「全楽器の平等化」に強い刺激を受けた結果でしょう。また第1楽章や第4楽章では、ハイドン譲りのポリフォニックなテクスチュアが随所に顔を覗かせます。ホモフォニーに終始せず、各楽器が追いかけっこをするような緊密なアンサンブルに、その影響が見て取れます。ハイドンが持つ「構築性と知的なユーモア」に圧倒されたモーツァルトが、それまで得意としていたイタリア風の「あふれる歌心」をベースに残しながらも、必死にドイツ・ウィーン風の「緻密な骨組み」を組み込もうと格闘した、その絶妙なバランスこそが、この曲の独自の魅力になっているのでしょう。

