チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調OP.64、ロブロ・マタチッチ(C)チェイコフィルハーモニー<1960年録音:ルドルフィヌム;芸術家の家にて>
これは実に面白い一枚だ。「チェコ・フィルの美しい音でチャイコフスキーを鳴らす」が正解か。
第1楽章、ミロシュ・コペツキーのクラリネットは、音の輪郭が非常に明確なのに、硬くない。暗いけれど透明。そして低音域に入っても、けっして音が「濁らない」。歩みは少し速く、「運命に追われているからこそ前へ進む」といった捉え方か。
第2楽章、白眉!!名人ミロスラフ・シュテフェクのホルンはさすがだ。柔らかく丸い。しかし芯がある。そして、決して「咆哮」しない。ヨゼフ・シェイバルのオーボエはなんと甘いのだろう。甘ったるいのではない、ただ甘いのだ!カレル・ヴァツェクのファゴットは、俊敏でいてよく鳴る。しかし低音に芯がある。そして弦楽群が、シルキーだ。そう全くスラブ感がない、しかし、これこそがチェコフィルのチャイコフスキーだ!と言っている。
第3楽章、ワルツ。マタチッチはかなり端正な音づくり。「これはドヴォルザークなのか」と思わせる瞬間がある。しかし、なぜかそれがいい。
第4楽章、冒頭E majorで始まるが、Allegro vivaceに入るとE minorになる。しかし、チャイコフスキーはここで長い葛藤に入る。E major→E minor→不安定な調性→D major→C major→再びE minor……最後にE majorと。この葛藤をチェコフィルのオーボエ → フルート → クラリネット → ファゴットといった木管群が色彩の変化を受け持つ。冒頭のE majorの荘厳な足取り、ラストのE majorの勝利感、それは、いくつもの積み重ねの上にやってくる。それがよくわかるマタチッチの構成であった。

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