2017年7月28日金曜日

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」_コンヴィチュニー

今夜の一枚・ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」ホ短調 Op.95。コンヴィチュニー:バンベルク交響楽団(1961年録音)。オイロディスクによる隠れた名盤の「ドヴォ9」を聴こうか。ドイツ人によるドイツ オケのドイツっぽい「新世界より」と思われがちだが、さにあらず!!コンヴィチュニーは、モラヴィア(チェコ)生まれ、ブルノ育ちであり、バンベルク交響楽団は、ナチス時代にチェコのドイツ系住民によって設立された「プラハ・ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団」が前身。すなわちその心底にチェコ=ボヘミア魂をもつ組み合わせの「新世界より」なのである。
まず、第1楽章の時間だが、12:08である。オタッキー諸氏はもうおわかりだろう。提示部の反復をおこなっているのだ。
渋めの乾いた弦楽の序奏からのホルンの信号!この音が抜群に哀愁を誘う音。そして、その後の低重心の弦楽群にグッと惹き付けられる。繰り返しの多いこの曲において、この「音」への自己への適合性は好き嫌いをはっきりさせる。その意味で極めて私にとって融合度の高い「バンベルク響」の響きとコンヴィチュニーのアーティキュレーション力といえる。
第2楽章、お馴染みのラルゴ。でも変に情緒的に演奏してほしくない。何故なら、この楽章は「変ニ長調」であり、主調のホ短調の遠隔調を用いることで、すでに幽玄的な浮遊感を兼ね備えているからだ。そしてコーラングレ(イングリッシュホルン)のもつ独特の哀愁感で十分なのだ。
その意味でコンヴィチュニー:バンベルクのシンプルで変な甘さのない演奏は、ある種のノスタルジックな気品を備えすばらしい。その上、イングリッシュホルンが100点満点の200点というくらいに「うまい」「味がある」からいうことなしである。その分、嬰ハ短調での中間部では巨匠は、十二分にテンポを揺らし、微妙な強弱で慈しむような演奏を心がけている。
3楽章スケルツォ、正攻法。要所要所に出てくる低弦のうなりがコンヴィチュニーらしくて思わず、口元が綻ぶ。
4楽章、分厚い音の波でありながら、どことなく田舎臭く、牧歌的なフィナーレ。怒られるかもしれないが、これこそボヘミアン風味を十分に兼ね備えた魂のフィナーレなのかもしれない。
大事な1枚である。


2017年7月23日日曜日

ドイツ・レクイエム 25

月に1度は聴きたくなるブラームス「ドイツ・レクイエム」シリーズ。第25回目となりました。
1.クレンペラー 2.サバリッシュ 3.ヤルヴィ 4.ジュリーニ 5.セル 6.コルボ 7.アーノンクール 8.ケーゲル 9.ロバート・ショウ 10.アクサンチュス 11.コッホ 12.ヘレヴェッヘ 13.シノーポリ 14.クーベリック 15.バレンボイム 16.レヴァイン 17.ケンペ 18.マゼール 19.アンセルメ 20.クレツキ 21.シューリヒト22.ガーディナー23.ハイティンク24.アバド
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第25回は、テンシュテット:ロンドンフィル+合唱団、ルチア・ポップ(Sp)トーマス・アレン(Br)<1984年ライブ録音>です。
テンシュテットは、この少し前にスタジオ録音をしていますが、今回はライブ盤での紹介です。
第1曲、冒頭の重厚さとゆったりとしたテンポで、テンシュテットが、如何なるドイツレクイエムを表現しようとしたかわかります。この第1曲の遅さは、かのチェリビッダケ盤を除けば恐らく最長でしょう。コーラスには、たっぷりと厳かに歌わせつつ、オーケストラはどこか悲しみを湛えているようです。
第2曲に入っても「変ロ短調」部分にこの第1曲の独特の構成が受け継がれる。「So seid・・・」の「変ト長調」で突如パッと光が差し込むような明るさが現われるが、またすぐに引き戻される。
そして終盤コーラス群の「喜び」をオーケストラの起伏により支えて進む。
第3曲 予想通りトーマス・アレンの暗く沈みこむような独白。
「うまい!」希望へ転じるフーガも叫びきることなく滔々と。
第4曲 テンシュテットはこの優しい舞曲にはそれほど思い入れはないようだ。淡々としている。
第5曲 ルチア・ポップの声は、私には少し明るすぎるが、さすがに伸びと響きが美しい。
第6曲 やはり数々の演奏で見せた鬼気迫るテンシュテットの暗黒的荒々しさは持ち込まれていない。「レクイエム」としての静謐の中で、華麗な大フーガも優美さをもちつつ展開するのだ。
重量感のある演奏ではあるが、敬虔さを失わずに作り上げており、テンシュテットの違った一面を感じることのできる1枚ではないだろうか。


2017年7月8日土曜日

チャイコフスキー「弦楽合奏のためのセレナーデ ハ長調 Op.48」_ショルティ

チャイコフスキー「弦楽合奏のためのセレナーデ ハ長調 Op.48」を聴こう。この曲は、初めて弦楽の虜になった曲である。私の年代的にも勿論カラヤンで聴いたのが始めであるが、「この曲はこんなものではない」と、探しあてた一枚がある。
ショルティ指揮イスラエルフィル(1958年録音)。勿論、今でもこの曲のNo.1である。
ショルティの情緒に溺れない毅然とした構成とイスラエルフィルの弦楽セクションの完璧な美しさ。
以前シーケンサで打ち込みをして<midi>作りに熱中していた時に、購入した楽譜もありました。




2017年7月1日土曜日

ドヴォルザーク 交響曲第8番_セル:コンセルトヘボウ管

ドヴォルザーク 交響曲第8番 ト長調 Op.88。セル:コンセルトヘボウ管(1951年録音:モノラル)で聴こう。セルのお得意の8番は、クリーブランド管で2度の録音(1958年&1970年)がある。勿論どちらも名盤の誉れ高い録音である。しかし今宵は、コンセルトヘボウとの最初の録音というわけだ。
8番と言えばまず冒頭の序奏でしょう。ト長調ではなく何故かいきなりト短調で始まるメロディ。このマイナーナチュラルスケールとやらの序奏が非常に好きだ。少しくすみがかったヴィオラの動きをベースが支え、トロンボーンがト長調へと導く。そして、フルートの鳥のさえずりのような調べ。コンセルトヘボウ管の神と言っておきたいフルートの第一人者バルワーザーの可憐な響き。第1主題が始まるとコンセルトヘボウ管の煌くサウンドの到来である。これで、もうこの曲に没頭することができる。
また、ワルツ風の第3楽章もお気に入り。コンセルトヘボウ管の弦楽群の上手さがモノラルながら堪能できます。
フィナーレのトランペットのファンファーレ、チェロによる主題、変奏部でのフルートの音色、ホルンのトリル。コーダにおけるトロンボーン、トランペットの急速半階音下降。
いゃあ、この8番は、メロディもさることながら、各楽器の面白さを味わえる曲だとづくづく感じている今宵この頃である。。