2017年4月30日日曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲第21番_ギレリス/コンヴィチュニー


モーツァルト ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467 を聴く。
この曲は、第2楽章のAndanteが、ご存知、スウェーデン映画の「みじかくも美しく燃え」の劇中曲(ゲザ・アンダ;演奏)で使われ、その美しいメロディで一躍有名となった。
そのせいで、最近は副題に「エルヴィラ・マディガン」とつくこともあるとか。これは映画の主人公の女性綱渡り師の名前でこの映画の原題ある。
さて、今宵 紹介したいのは、ギレリス:コンヴィチュニー + ゲヴァントハウス管弦楽団の1960年のライブ(Mono)です。
この演奏は、通常考えうるモーツァルトの21番からすると異質かもしれない。

第1楽章 Allegro maestoso は、行進曲風の第一主題。コンヴィチュニーの弦楽のユニゾンは無骨に始まるが、木管群の柔らかさとの対比を強く意識している演奏であろう。
そして出だしのギレリスのピアノ。右手は極めて柔らかく転がるような音色、しかし左手に「あのギレリス」らしさが見えてくる。そして提示部。40番ト短調の調べが突然登場するが、すぐにト長調の第2主題へ。こちらは、ホルン協奏曲第3番K.447第3楽章の主題と同じメロディである。
カデンツァは、極めてベートーヴェンっぽさを感じさせる弾きぶりで、締めくくってくれる。ここは、思わずニヤけてしまう。
さて、第2楽章 Andante。コンヴィチュニーの淡々としてぶれない古典派音楽然とした気品を保つテンポ。加えて、ギレリスの明確な鍵打。極めてシンプルだ。このAndanteは、余計な甘さはなくても十二分に気高く優しく美しいのだということを2人の巨人は、証明して見せたのではないだろうか。
低音のピチカートと3連符に支えられながら、調性を幾たびも変化させ、淡々と流れていくだけで、余計なロマンティシズムは必要のないことを。
終楽章は、「モーツァルトのジェットコースター」を楽しむことができる。得意の短調変化もない、また展開部もなく一気呵成だ。ギレリスは、やはり右手でキラキラと音の粒を投げ飛ばしながら、時おり左手で硬質な低音を響かせる。

異質と書いたこの演奏は、この演奏のためにフォルテ・ピアノ・ペダルという装置を用意した古典派であり、かつ斬新なモーツァルトの本質に即した演奏とも言えるかもしれない。
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2017年4月22日土曜日

シューマン 交響曲第2番_シノーポリ

シューマン 交響曲第2番 ハ長調 Op.61を聴く。4番が一番好きなはずなのに、2番目に好きな2番を何故か一番聴いている気がする。
今日は、シノーポリ指揮ウィーンフィル(1983年録音)で。シノーポリは、この後、シュターツカペレ・ドレスデンと全集を録っており、勿論保有していますが、今日はVPOで。
精神障害に悩まされていた1845-46年の作品で、「頭の中でハ長調のトランペットが響いている」とシューマンが言った幻聴の<トランペットのモットー主題>からスタート。
何といっても第3楽章アダージョのやるせなさ、憂いに満ちたメロディは最美といってよいだろう。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが非常に高い音へ昇っていってトリルになるところなど、何度聞いても脳が鷲摑みされてしまう。この楽章は、単に美しいだけでなく、になやら「彼岸」への静かな到達のようなものを感じるのだ。シノーポリは、この演奏をするにあたり、「シューマンの正気と病魔について」というノートを書いている。彼は、パドヴァ大学で心理学と脳外科を学んでおり、楽曲と病気の回復過程を記載しているのも面白い。
この2番は、シノーポリにとってはずせない1曲かもしれない。

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2017年4月14日金曜日

ドイツ・レクイエム 22

月に1度は聴きたくなるブラームス「ドイツ・レクイエム」シリーズ。第22回目となりました。
1.クレンペラー 2.サバリッシュ 3.ヤルヴィ 4.ジュリーニ 5.セル 6.コルボ 7.アーノンクール 8.ケーゲル 9.ロバート・ショウ 10.アクサンチュス 11.コッホ 12.ヘレヴェッヘ 13.シノーポリ 14.クーベリック 15.バレンボイム 16.レヴァイン 17.ケンペ 18.マゼール 19.アンセルメ 20.クレツキ 21.シューリヒト
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第22回目は、ガーディナー指揮:オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク、モンテヴェルディ合唱団、シャルロッテ・マルギオーノ(Sp)ロドニー・ジルフリー(Br) <1990年録音>です。
ガーディナー最初の録音である。ガーディナー先生は、まず楽器からこだわってオーケストラを編成しているそうです。滑らかなウィナー・ホルン、短いウィナー・オーボエ、ティンパニーのための硬いバチなどなど。もちろん弦楽群は、ノン・ヴィブラートの奏法。
オリジナルによる最初の演奏です。
透明感と柔らかな響きに貫かれた演奏で、それはコーラスにも言える。クレンペラーに代表される重厚さや、ジュリーニに見られるロマンティシズムは、当盤には微塵もなく、バロック的な造形美で彩られている。こだわりのアクセントが音楽そのものを引き締めている。第6曲、大フーガの前のスフォルツァンドに至る場面の美しさは他の演奏ではなかなか見られない。大フーガの全く力みのなさが、ガーディーナー先生の特徴でもあるが、テンポは思い切り揺らしまくっている。しかし、典礼的な端正さをもつ演奏であると言えるのではないだろうか。これはこれで面白い。
とにかくどんな演奏でも私はこの曲が好きなのだ。


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2017年4月2日日曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲第15番_ミケランジェリ



今日は、六義園のしだれ桜を始めとし王子駅付近の桜の散策に出かけました。
このような春の陽気に似合うモーツァルト ピアノ協奏曲第15番変ロ長調 K.450を聴こう!
ミケランジェリ_コード・ガーベン(C)北ドイツ放送交響楽団(1990年Live録音)です。
ミケランジェリも大好きな15番は、編成は、Ob(2), Fg(2), Hrn(2) 弦楽5部(終楽章のみフルート)と、いたってシンプルで小編成です。
第1楽章は、明るく弾むようなオーケストラで始まります。ワクワクするような春の陽気にピッタリ。
さて、指揮をするコード・カーベンは、全く無名。そりゃあそうだ!彼はグラモフォンのプロデューサーなのだ。
気難しいミケランジェリと長く付き合っていたが、ちょっとしたことで暫く縁を切っていました。このCDは、ミケランジェリが倒れ、奇跡的復活を果たした時にコンチェルトを一緒にする指揮者が見つからず、カーベンを指名して演奏されたものである。ちなみに前年の1989年に20.25番のライブもある。
15番に話を戻そう。特徴的なのは、ピアノの入り。通常主題をピアノが繰り返すのだが、15番では、極めて即興的で華やぐようなパッセージの序奏から始まる。そして主題を提示し、短調へ一瞬移行しグッと聴衆を引き込み、すぐにまた長調へ。モーツァルトの得意技炸裂!ミケランジェリのピアノの軽やかさは言うまでもないが、テンポも思い切り揺らし、緩急自在を慈しみ弾いているのがわかる。
第2楽章、アンダンテは最高の「赦し」の音楽。
弦楽とピアノによる交互の旋律は、心を静かに慰めてくれる最高のパッセージ。誰もが優しくなれるでしょう。
第3楽章、アレグロの出だしは、映画「アマデウス」でもお馴染み。
スキップしたくなるような主題。春を満喫できるロンド。
アインガングとカデンツァのミケランジェリの華やかにして慈しみのある音の粒が身も心も軽くしてくれます。
お薦めの15番です。