2022年11月8日火曜日

ドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104」_シュタルケル

 ドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104」、シュタルケル、ドラティ:ロンドン交響楽団(1962年録音)にて聴く。マーキュリー盤の名演。シュタルケル2度目の録音。有名なコダーイの無伴奏チェロソナタが1948年のディスク大賞 (Grand Prix du Disque) を獲得した年に、ドラティの招きでダラス交響楽団の首席チェロ奏者となったシュタルケル。ドラティとは長い付き合いか。その後フリッツ・ライナーに気に入られメトロポリタン歌劇場管弦楽団の首席チェリストに就任。1953年、ライナーがシカゴ交響楽団に移るのに伴って移籍し、ソリストになる1958年まで在籍した。オーケストラメンバーとしての音楽づくりがこの曲にも如実に現れている。ネットの評価には、チェロが前に出てこないとかこじんまりとか豪快さがないとか出ているが、シュタルケルの精緻さとハーモーニーへのこだわりが強く感じられる作品だ。

第1楽章ドラティの男気冒頭第1主題、第2主題バリー・タックウェルの愛情ある美しきホルンも聴きものだ。シュタルケの入りは、スローテンポで第1主題を朗々と。第2楽章、モントゥーに鍛えられた木管群と引き継がれたシュタルケルのチェロの哀愁感は、メロディーメーカーたるドヴォルザークの美しさをこれでもかと醸し出す。中間部では、またまた男気ドラティが顔をだしテンポを速めるがシュタルケルは端正さを失わない。第3楽章、白眉は、コンマスのヴァイオリンとの二重奏。そのハーモニーの美しさは格別。



2022年7月24日日曜日

メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」_ドラティ

 ドラティといえば、私には同じくMercury盤の「1812年序曲」が最も印象的だが、このメンデルスゾーン 交響曲第3番イ短調 Op.56 『スコットランド』(ロンドン交響楽団;1956年録音)も男気ドラティの真骨頂!快速に進む主部の1楽章、たっぷりと情感を膨らませ、強弱や旋律線のニュアンスを細やかに謳いあげる3楽章。4楽章も、クライマックスの清々しさとスケール感を伴い堂々たるテンポで締め括ってくれる。ちなみに第2楽章のメロディが有名なスコットランド民謡的な「ヨナ抜き」の「ドレミソミレドレ」。「ヨナ抜き」好きな日本人にはたまらないかもしれない。



2022年7月16日土曜日

ベートーヴェン チェロソナタ全集_ヤニグロ・デムス

 ヴァンガードの名盤からヤニグロ、デムス 「ベートーヴェン チェロソナタ全集」を聴く。(1964年録音)。その品格ある演奏は、フルニエにもひけをとらない。しなやかで艶のある伸び、1音1音を大事に、決して気てらったりしない生真面目さ。若きデムス(当時35歳)のピアノも歌い過ぎず、終始品格の高い音楽に満ちている。カザルスに認められエコール・ノルマル音楽院の親友ディラン・アレクサニアンに推薦され師事した。アレクサニアンは、何を隠そうフルニエの師でもある。



2022年5月7日土曜日

モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲_セル

 モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364(K6. 320d)。セル、クリーブランド管弦楽団、(Vn):ラファエル・ドルイアン、(Va):エイブラハム・スカーニック<1963年録音>にて聴く。クリーブランド管のコンサートマスターと主席ヴァイオリニストだった2人を独奏に置き、息ぴったりの演奏。白眉の第2楽章、セルの出だしのテンポは極めてゆったり、独唱部分は、古めかしい録音もあってか、かえって幽玄的な雰囲気を醸し出す。2人の音のバランスの良さが際立つ。

音色も名だたるヴァイオリニストと決して引けを取らない。特に、スカーニックの技術はたいしたもんだ。3楽章は、少し早めのテンポのセル、クリーブランド管の一糸乱れぬアンサンブルは聴きごたえがあるなあ。

2022年3月12日土曜日

モーツァルト ピアノ三重奏曲集_ズスケ

 春の陽気に誘われて聴くは、モーツァルト ピアノ三重奏曲集(1-6)ズスケ(V)オルベルツ(P)プフェンダー(VC)【1988-89年:ドレスデン協会 録音】。ズスケが、旧東ドイツの面々、ズスケ四重奏団でチェロのパートを支えていたプフェンダー、無名ながらマニアにはハイドンのピアノソナタ全集で有名なモーツァルト・ヴァイオリンソナタ全集で共演しているオルベルツを従えての名盤。モーツアルトのピアノ三重奏曲6曲はすべて「長調」。どこまでも優しくそよ風のような軽やかで優雅な響き。

(ちなみに、モーツァルトには、もう1曲ピアノ三重奏協奏曲ニ短調KV.442がある。しかし未完でスタドラーが加筆している作品。こちらの名盤は、ボスコフスキー、リリークラウス、スコラス・ヒューブナー)


2022年2月5日土曜日

ブラームス 交響曲第2番_ビーチャム

今日の一曲は、久々のブラームス 交響曲第2番ニ長調OP.73。トーマス・ビーチャム、ロイヤルフィル。<録音1958,59年>。
AmazonPrimeで見つけました。噂にたがわぬ名演。冒頭から清々しい音質。特に木管群は秀逸。第2楽章のチェロの旋律は、情念っぽさがなく、あくまで淡々、ホルンと木管の掛け合いはこってりと。3楽章のオーボエの牧歌的な優しさは、この上ない。終楽章、冒頭トゥッティ後のアンサブルの乱れもなく、ロイヤルフィルとビーチャムの積年の手兵ぶりが見てとれる。コーダも変にアッチェランドせず堂々と駆け抜ける王道ぶり。久々に良き2番に巡り合えました。


2022年1月29日土曜日

シューベルト ピアノソナタ20番・21番_ツィメルマン

 今日の一枚。シューベルト ピアノソナタ D959,D960。クリスチャン・ツィメルマンの25年ぶりの2016年、日本公演を終えた後に、新潟の「柏崎市文化会館アルフォーレ」で録音したという。ピアノは、もちろん持ち込みのスタンウェイ。(高崎のスタウェイセンターにあるらしい)当該ホールは、永田音響設計によるもの。ツィメルマンは、故郷、ポーランドのカトビッツェ市の新ホール設計に携わっているが、ポーランドの40歳台の若手建築家コニール氏と永田音響設計の豊田泰久氏とのコンビにより完成させている。さて、中部沖大地震時にツィメルマンはすぐさま柏崎でのチャリティーコンサート開催を決めたが、体調不良のために中止を余儀なくされた。1年後、自腹で日本を訪れ、「中越沖地震1周年復興祈念コンサート」に出演し、柏崎市に100万円を寄付もしている。復興のシンボルとして建てられた柏崎市文化会館アルフォーレでリサイタルを行い、なお6日間滞在録音までおこなったのは、そういった意味深さがある。演奏は、デモーニッシュな部分はいささかもなく、柔らかく美しいシューベルト。時折見せる、憂鬱さや切迫感もツィメルマンならではの敬虔さと洗練さを感じる。