2021年2月23日火曜日

シューマン ピアノ協奏曲_バイロン・ジャニス

 バイロン・ジャニスと言えばラフマニノフ3番の脅威的な疾走。そのすご技は、アルゲリッチやカッチェンをも凌ぐ。なんせ、ホロビッツが自ら弟子に誘った唯一のヴィルトゥオーソ。しかし、今日は、シューマン ピアノ協奏曲イ短調Op.54を聴く。共演は、Ms.Sことスクロヴァチェフスキ、ミネアポリス交響楽団。(1962年録音)マーキュリーレーベルにて、鮮明さは時代を感じさせずやはり素晴らしい。冒頭の有名な「雪崩式ブレンバスター」は、ピアノ・オケともに極めて明確に力強く。第1主題のオーボエも変わらぬ力感をもち哀切というよりも苦悩を感じさせる響き。しかしジャニスのピアノが主題を引き継ぐとそこに憂いが生まれる。その意外な抒情的なタッチに思わず引き込まれる。アルペジオの上手さは流石。ジャニスのピアノは、どの音も一つずつ輝いている。第2楽章、Intermezzo にふさわしい愛らしい主題。オケとの掛け合い、中間部のチェロとの見事なロマンチシズムを奏でる。第3楽章、軽く弾むようなメロディ。ピアノの波打つようなパッセージと、それを彩るオーケストラが絡み合いながら、勢いよく進んでいく。(ある時はピアノのに対し、オケはヘミオラで掛け合いながら)技巧的なパッセージでは、ジャニスのセンスが冴えわる。スクロヴァチェフスキは、ジャニスの良さを十二分に引き出すメリハリの利いた骨太の構築、そして、ジャニスの鍵打に負けない厚みのある絢爛なオケぶりを披露。スカッとする演奏です。



2021年2月21日日曜日

フォーレ レクイエム_アントニー・ウォーカー

 フォーレ「レクイエム」。アントニー・ウォーカー&カンティレイション、シンフォニア・オーストラリスにて。1893年ネクトゥー&ドラージュ校訂版使用。この曲は、ブルックナーの交響曲に負けないくらい様々な版があり、各指揮者も結構バラバラで演奏している。4度録音してるコルボなどは、1回目(72年:聖ピエール=オ=リアン・ド・ビュル聖歌隊)2回目(92年:ローザンヌ声楽)は、1900年第3版、3回目(2005年東京ライブ:ローザンヌ声楽)4回目(2006年:ローザンヌ声楽)は1893年ネクトゥー&ドラージュ校訂版。2度録音しているヘレヴェッヘは、1回目(88年:ラ・シャペル)は1983年ラター版、2回目(2001年:ラ・シャペル・ロワイヤル)は、第3版である1900年版を第2稿の校訂者であるジャン=ミシェル・ネ クトゥーが1998年に手直しした1901年版を使用と、同じ指揮者でも版を変更しているから面白い。通常演奏される第3版とこの1893年ネクトゥー&ドラージュ校訂版は、もっとも言われる違いは、フルオケか室内楽かというところだろう。しかしそれ以外にも多々ある。編成で言えば、TimとHpが意外と違うところで登場する。またLibera Meの"Dies irae" に入る前52小節目のHrのリズム(すべて4分音符)など。譜割りもIntroit 24小節目・テナーのパートソロの5小節目<ここは版によりすべて違うので、ここを聴けば何版かわかる>、Offertoire 58小節目・バリトン・ソロなどなど。さて話が横にそれたが私がウォーカー版で好きな個所は、Offertoireの出だし、弦楽の浮かび上がる鮮明さだろうか。全体を通してウォーカーのテンポ設定は極めて「ゆったり目」。コーラスのアンサブルは成熟度が高く、綺麗に揃っている。ソプラノの声も柔らかく落着きがあり、テナーも変な頑張りがなくて良い。ソロのサラ・マクリヴァー(Sp)は、かなり好きな声だ。透き通って伸びのある高音部、柔らかい低音部。テディ・タフ・ローズ(Br)も力強い声。オルガンとの倍音にもってこいの声だ。次回、この曲の説明は、曲自体について書いてみたいものだ。



2021年2月11日木曜日

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲集_シュナイダーハン


 祝日の昼下がり、シュナイダーハン指揮振りによるベルリンフィルとのモーツァルト ヴァイオリン協奏曲全集(5曲)&ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ、ロンド(2曲)を聴いている。(録音:1965&1967年:ベルリン・イエス教会)。指揮振りだけでなくカデンツァもすべて自作。ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョK.261もお気に入り。この曲は、協奏曲第5番の緩徐楽章(第2楽章)の代用の楽曲。もともとこの5番は、ザルツブルク宮廷楽団の楽長であったアントーニオ・ブルネッティのために書かれたが、そのアダージョが、あまり技巧の達者でないブルネッティには無理筋と思ったのか、急拠新しくこのアダージョを仕上げて入れ替えたらしい。ともにアダージョ、ホ長調をとるが、このK.261では、協奏曲全楽章を通じて使われていたオーボエがフルートに替えられている。K.269のロンドは、1番の終楽章の代用としてといわれているが、こちらは定かではない。K.373のロンドは、フルート版もあり(K.Anh.184)ニ長調に移調して作られている。シュナイダーハンの柔らかく温かみのある演奏を満喫。