2016年11月27日日曜日

ドイツ・レクイエム 17

月に1度は聴きたくなるブラームス「ドイツ・レクイエム」シリーズ。第17回目となります。
①クレンペラー②サバリッシュ③ヤルヴィ④ジュリーニ➄セル⑥コルボ⑦アーノンクール⑧ケーゲル⑨ロバート・ショウ⑩アクサンチュス⑪コッホ⑫ヘレヴェッヘ⑬シノーポリ⑭クーベリック⑮バレンボイム⑯レヴァインン
第17回目は、ケンペ:ベルリンフィル+ベルリン聖ヘトヴィヒ大聖堂合唱団(カール・フォルスター)、エリーザベト・グリュンマー(ソプラノ)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)<1955年録音>です。
重厚かつ敬虔なケンペの名盤。代表的な1枚であるクレンペラー盤での合唱が今一つ気に入らないという諸氏は、是非こちらを!
ゆっくりとしたテンポでの弦楽群の低重心の歩み、金管群の眩いばかりの輝き、木管群の優しさ、コーラス群の深い響きとケンペの歌心が堪能できます。特に第2曲、変ロ短調で始まる重苦しい出だしと変ト長調へ移行しブラームスが時折見せる暖かみのあるフレーズへの変化、後半アレグロでのフォルテなど聴きものかと。
第3曲、若きフィッシャー=ディースカウのモノローグの緊迫感は群を抜いています。やはり余人をもって代え難いものがあります。ケンペは、ドラマチックな演奏で支えます。
第4曲、Selig動機の変奏であるこの舞曲は、柔らかく心安らぐものであって欲しい私です。このケンペのように。
第5曲、グリュンマーの透明さと凛とした歌声は素晴らしい。特に憂いを含んで伸びてゆく響きがたまりません。
第6曲は、大フーガへ向けてゆっくりとしたテンポで歩みつつ、うねりまくる弦楽群と咆哮する管打!が聴きものです。力強く、ある時は優しく、そして華麗につながってゆく賛歌。最後のフォルテにいたるまでの、ケンペの構築する「変化」が見事に表現されています。「ドイツレクイエム」にとってこちらも貴重な一枚です。


2016年11月26日土曜日

ブラームス ピアノ協奏曲第2番_バレンボイム

今朝の一枚。ブラームス ピアノ協奏曲第2番。バレンボイム+バルビローリ:ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1967年録音)。
名盤の多い、当曲にあって、交響曲的展開における風合いを一体化で表現した異彩を放つ名盤と信じて疑わない演奏。
バルビローリの圧の強い弦楽群が繰り広げるブラームス節に、青年バレンボイム(25歳)が情熱的な鍵打と独特のルバートで迎え撃つ。特に情感深いスケルツォの第2楽章は圧巻。何度も訪れるバルビローリの繰り出す、オーケストラの音の高波に、バレンボイムは溺れることなく一体化しながらともに昇華してゆく。ちょっとここで「ブラボー!」と叫んでしまいそうだ。
大好きなアンダンテの第3楽章は、バルビローリの得意の泣き節。バレンボイムのピアノも強いタッチながら、深い低重心の響きでそれに応える。こちらも貴重な1枚。


2016年11月23日水曜日

チャイコフスキー 交響曲第4番_モントゥー

今朝の一枚。チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調Op.36。
モントゥー:ボストン交響楽団(1959年録音)にて聴く。
いつも書いているが、モントゥーは、本当に聴きたい楽器の音、こんな音が鳴っているんだという楽器の音を浮かび上がらせてくれる天才だと思う。
モントゥーの4番は、極めて爽快なテンポでありながら、アクセント、強弱、揺れによりドラマチックで骨太の演奏だと感じる。
4番は、もちろん「運命」がテーマに用いられているわけだが、作曲された時期(1877年)に着目しなくてはならない。
露土戦争への突入という時代背景と、チャイコフスキー自身のアントニーナ・ミリュコーヴァとの結婚と早すぎる離婚(わずか2か月)、フォン・メック夫人との出逢い(パトロン:一度も逢っていない膨大な手紙だけの関係)の年である。
そもそも、この4番は「フォン・メック夫人」に捧げられた交響曲であるが、ダモクレスの剣の如く幸福への希望、平和や癒しへの憧れを阻止するかのように立ちはだかる「運命」。それに強靭な意志で抗う姿、怒り哀しみを乗り越えての歓喜を描くとともに、チャイコフスキー自身の憂鬱と酩酊の感情を内包させた曲といえる。
それゆえ、第2楽章を如何に演奏するかは、非常に重い。
モントゥーの感情的にならずに、それでいて音の一つ一つを大事に扱う演奏に、その格調の高さを感じる。
そして終楽章のクライマックへ向けての追い込みも「モントゥー爺さん」のお家芸だ。これは、貴重な一枚である。


2016年11月12日土曜日

ドヴォルザーク チェロ協奏曲_堤・コシュラー

今朝の一枚。ドヴォルザーク チェロ協奏曲 ロ短調 OP.104。
堤剛+コシュラー:チェコフィルハーモニー(1981年録音:プラハ芸術の家)。まず、このCDのプロデューサーは大賀典雄氏であると聞いたことがあります。(間違っていたらすいません)録音も素晴らしいです。
さて、序奏を聴いただけで、実はこの演奏の虜になりました。
ノイマン時代のチェコフィルにコシュラー!!深い弦楽の響き、あの哀愁を帯びた第二主題のホルンの朗々さ、木管の煌き。おちついたシンフォニックなトゥッティ。コシュラーはやはりいいです。
日本の第一人者たる堤氏も負けてはいません、線が細いとコメントされているのを見かけますが、どうしてどうして格調高く、ある時は艶を膨らませた実に好きな演奏です。
郷愁に満ちた第2楽章、木管のまろやかな響きに誘われてチェロが応える冒頭は実に美しい。中間部へ向かう直前のオーケストラの見せる毅然とした一瞬の爆発力。コシュラーの凄みを感じます。
ドヴォルザークの「泣き」のメロディーをチェロとオーケストラの掛け合いで紡いでいく面白さを十分に感じ取ることができます。
堤氏の高音部の美しさも格別です。
舞曲風のワクワクした冒頭のオーケストラから各楽器の魅力全開の面白さをもつ終楽章は、チェロとの掛け合いが見事に融合されており、管楽群の明るさが、ボヘミアンなローカル色を醸し出すだけでなく、哀愁を帯びたチェロと絹のような弦楽群の美しさを堪能できます。コシュラーは、もっと演奏を残してくれればよかったです。
マイベストは、フルニエ:セルですが、こちらも貴重な一枚です。



2016年11月11日金曜日

ドイツ・レクイエム 16

月に1度は聴きたくなるブラームス「ドイツ・レクイエム」シリーズ。第16回目となります。
①クレンペラー②サバリッシュ③ヤルヴィ④ジュリーニ➄セル⑥コルボ⑦アーノンクール⑧ケーゲル⑨ロバート・ショウ⑩アクサンチュス⑪コッホ⑫ヘレヴェッヘ⑬シノーポリ⑭クーベリック⑮バレンボイム
第16回目は、ジェームス・レヴァイン:シカゴ交響楽団&合唱団、キャスリーン・バトル(ソプラノ)ホーカン・ハーゲゴール(バリトン)による1983年録音です。「合唱の神様」と言われたM.ヒリス女史の指導による合唱の美しさが何といっても魅力です。
レヴァインは、曲の入りを比較的明るめの中庸な音のバランスで、テンポも引きずることなく、淡々とコーラスに歌わせます。これは淡白かと思いきや、第2曲は、じっくりとしたテンポでドラマチックな構築をしていきます。ティンパニーの使い方、コーラスの強弱感、中間部の長調から「人はみな草のごとく」へ戻る時の間のとり方など独特かもしれない。後半部アレグロの起伏にとんだ喜びの表現は、レヴァインらしくオペラ的な要素を感じることができる。これは、CSOの金管群の成せる業か。
第3曲、バリトンのハーゲゴールは、いい声なのだが少し私には艶っぽすぎる声だ。後半の壮麗なフーガは、やはりもう少し速いテンポで駆け抜けてもらいたかった。
第5曲、キャスリン・バトルの声はさすがです。この曲をここまで可憐に歌えるのはキャスリンだけかも。極めて耽美的な「慰め」の1曲ではないでしょうか。
第6曲、2曲同様にドラマチックな構築。大フーガのテンポ感も実に巧みだ。
第7曲、第1曲同様に、淡々と終わりを迎えます。
総じて、救いと報いを大らかに歌い上げる形式でのドイツレクイエムといえるでしょう。