2021年8月29日日曜日

メンデルスゾーン 交響曲第5番「宗教改革」_マゼール

 今日の1曲は、メンデルスゾーン交響曲第5番ニ短調「宗教改革」、マゼール;BPO<1961年録音>。

この曲の厳かな序奏部、弦楽器による「ドレスデン・アーメン」を聴くたびに何故か胸が熱くなる。決然とした第1主題!伸びやかな旋律の第二主題!展開部ではフガート的なその旋律を疾風怒濤の如く快速で走り抜けるマゼールの棒。再現部では、「ドレスデン・アーメン」が何気に現れ、低重心で全奏の第1主題で幕を閉じる。第2楽章、何と優雅なスケルツォ。遠くでホルンのファンファーレ。トリオは流麗で美しい。やはりマゼールの3拍子は格別だ。
第3楽章、わずか54小節の短い楽章ながら、1stヴァイオリンの物悲しい旋律に狂おしさを感じずにおれない。フルートの切ない響きも手伝っ心に染み入る哀切。終楽章のつなぎとは思えないメンデルスゾーン旋律。終楽章、フルートによるルター作曲のコラール「神は我がやぐら」。カールハインツ・ツェラーのフルートは魅力的な音。他の木管も加わり美しく音場が広がっていき、金管が加わると神々しささえ響いてくる。vivaceのブリッジを経て、maestosoのニ長調Allegro。壮麗な第1主題と軽やかな第2主題。弦楽器のフガートの上に管楽器によるコラール旋律が奏されると、もはや誰もが音階の昇華を待ち望むであろう。コーダでは、コラール主題が全奏で力強く現れ、改革の勝利を表すかの如く雄雄しい響きをもって賛美歌「神は我がやぐら」を歌い上げる。マゼールのテンポは確かに速い。しかし活力に溢れ、深みもある名演ではないかと思っております。

2021年8月27日金曜日

ハイドン スターバト・マーテル_ピノック

 ちょっと渋いですが、ハイドン「スターバト・マーテル ト短調 Hob XXbis」を視聴。ピノック(C) イングリッシュ・コンサート &コーラス<1989年録音:オール・セインツ教会>。編成は、オーボエ2(コーラングレ持ちかえ:2曲10曲)、弦楽、オルガン。どことなくペルコレージの風味を感じさせる短調、優美さと晴れやかさ兼ね備えた長調。6曲目(テノール独唱)、どことなくモツレクの基となる音階を感じる。8曲目、Sancta Materは、美しい曲。9曲目、Fac me vere のアルト独唱は、哀切の「白眉」。11曲目、Flammis orci ne succendarは、バス独唱は、疾風怒濤。13曲目、Quando corpusのアルトとソプラノの独唱は、やはりペルコレージを彷彿させる。終曲、Paradisi gloriaは、打って変わって華やかなアーメンコーラス、かなり異質な終わりを迎える。



2021年8月19日木曜日

モーツァルト ハイドン・セット_エマーソン弦楽四重奏団

 モーツァルト 「ハイドンセット」弦楽四重奏曲14番-19番、エマーソン弦楽四重奏団(1988-1991年録音)を聴く。

弦楽四重奏曲を本格的に聴きだしたのは、このエマーソン弦楽四重奏団のハイドン「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」【2002年録音】の弦楽四重奏版のCDを購入したのがきっかけでした。さて、ハイドンがモーツァルトに及ぼした影響は大きく、「ハイドンセット」は、1785年1月15日と2月12日に、ハイドンをウィーンの自宅に招き、これらの新曲を披露し献呈した。モーツァルト自身がヴィオラを担当したとも言われている。最初に魅了されたのは、何と言っても14番第4楽章。複数のフガートが重なる時の立体感。もはや弦楽四重奏であることを忘れさせてくれる壮大な音楽。「ジュピター」の登場のはるか前に、フーガとソナタ形式の見事な統合を完成せしめていたのだ。そして、ベートーヴェンが愛してやまない18番。モーツァルトオタクのベンちゃん、彼の弦楽四重奏曲5番が凄い。イ長調の調選択、両端楽章にソナタ形式を置き中間部にメヌエットと変奏曲、そのコーダの規則的なチェロの歩み、1楽章の6/8拍子からの逸脱、終楽章副主題の類似などなど共通項のオンパレード。どこまでオタクやねん って話し。エマーソンは、ある時は陰影に富み、またある時は軽やかに。ヴィブラートを効かせた起伏に富んだ表情によってふくよかな音像を紡ぐため、モーツァルト独特の柔らかい風合いが心地よい。ピュアな音色、やや硬めに厳格なリズムの刻みなど、現代音楽が得意と評されいるが、モーツァルトに十二分に合っていると思っている。


2021年8月8日日曜日

ブラームス ドイツレクイエム 40

 ドイツ・レクイエムを聴く。40

ヘルムート・リリンク(C)シュトゥットガルト・ゲッヒンゲン聖歌隊、シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム 、ドナ・ブラウン(ソプラノ)ジル・カシュマイユ(バリトン)聴く。名盤復活シリーズ!1991年に録音し現在では入手が難しくなってしまった名盤の再発売CDです。宗教曲の合唱指揮者としても名高いリリングならではの各パート、声部まできめ細かな解釈が魅力の演奏。1曲目、冒頭かなりゆったりとしたテンポの中でコーラスを馥郁と歌わせる。重さ暗さの面は一切ない。只々美しく「祝福されたるは・・慰められるのですから。」と奏でてゆく。コーラスも力みなくリリンクの解釈に沿って歌いこなす。第2曲、起伏を伴って始まるオーケストラに暗さはなく、ただ重い足取りを表現するかのような出だし、繰り返しに力強さを増し訴えかけるような表現へと変貌する。長調へ転じた75小節からは、暖かさに満ちた歌声とともに軽やかさが加わり、前節との対比をうまく表現する。
198小節、「Aber des Herrn Wort」も、力みもなくすっと謳いあげ少しゆっくり目のアレグロへ。嬉々としたコーラス群の上手さが光る賛歌。第3曲、カシュマイユ(バリトン)の声は、包容力のあるいい声。模倣するコーラスは、前面に出ずに影絵のような存在。「Nun Herr, wes soll ich mich trösten?」からは、緊張をたかめつつ、コーラスの面白さをうまく表現している。そしてフーガ。その壮麗さを頑張って歌ってくれた。第4曲、その舞曲は、一時の清涼剤が如く。流れような表彰の違いを巧みにこなす。ハープの刻みが印象的。第5曲、ブラウン(ソプラノ)の声は、伸びのあるいい声だが個人的にはもう少し憂いを・・・第6曲、スフォルツァンドへの展開は少し迫力に欠けるが。大好きな大フーガ前の七色のコーラス変化は美しい。大フーガのアルトの入りは落ち着いた入りでOK。テーノルのカンカンさはカッコいい。ベースの落ちつきも締りをつける。ソプラノが時々声に硬さが見られるのは致し方なしか。全体的には圧倒的な賛歌にふさわしいコーラスぶりを発揮。終曲、テンポは比較的ゆったり目で、最後まで祝福と慰めをしっかりと謳わせたいリリンクの解釈か。個人的にはかなり評価の高い名盤の一つとしたい。