2024年3月10日日曜日

シューマン ピアノ協奏曲_カッチェン

 シューマン ピアノ協奏曲イ短調OP.54,カッチェン;ケルテス<イスラエル・フィル><1962年録音>にて聴く。奇しくも40代前半で命を落とした2人の演奏。冒頭のカッチェンの決然さに応えるケルテス。続く第一主題では、さほど甘くないオーボエの主題を受けるカッチェンのピアノが、ロマンの香気とメランコリーの息吹を吹き込む。この第一主題はダーヴィト同盟員としてのクララの名前である「キアリーナ Chiarina」の綴りを音名変換(CーHーAーA)で有名だ。カデンツァのカッチェのピアノは、重ねられた和音の豊かな音色を余すことなく表現し、トリルを伴った繊細で儚い響きもお茶の子さいさい。緩徐楽章では、イスラエル・フィルの極上の弦楽群(チェロ)を堪能できる他、伴奏に廻ったカッチェンの優しい響きを相伴に預かる事ができる。終楽章、カッチェンの軽やかな指の鍵盤の行き来が見えるようだ。煌めくようなピアノの旋律、満を持してのオーケストラの絡み合い。激しさの中でも透明感を失わないカッチェンの珠玉の一枚です。

4人、ピアノ、テキストの画像のようです
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2024年2月24日土曜日

グリーク ピアノ協奏曲_アンダ

 グリーク「ピアノ協奏曲イ短調 Op.16」ゲザ・アンダ(p)クーベリック;ベルリンフィルハーモニー(1963年録音)で聴く。

この曲の聴きどころは、何と言ってもアンダの透明感にあふれ、硬質な音色だろう。シューマンと同じイ短調で書かれたこの曲は、なんと400回も修正がされたものらしい。我々が聴いているのは初稿から40年間修正続けてきたもののようだ。第1楽章、カデンツァのアンダの燦めくような音は素晴らしい。ブラームスで見せた豪快な拳打も聴きものだ。第2楽章は、弱音器をつけた弦楽群から始まり、トランペット、木管群、ホルンと感傷的なフレーズが奏でられピアノが引き継ぐ。アンダの優しさ・繊細さが滲み出る白眉の場面。第3楽章、決然とした民族舞踊的なフレーズに合わせ、歌うピアノ、中間部のカールハインツ・ツェラーのフルート独奏は軽やか。終盤にかけての「雪崩式ブレンバスター的」な白熱の場面でも、アンダはブレることなく確実な拳打でそのロマンティシズムを見せつけてくれる。クーベリックは、表情の豊かさに重きをおいた見事なサポートでした。


2024年2月18日日曜日

シューベルト 交響曲第5番_サヴァリッシュ

 シューベルト 交響曲第5番変ロ長調 D.485、サヴァリッシュ;ドレスデン・シュターツカペルレ(1967年録音)。

5番は、モーツァルトの和声を色濃く模し、如何にモーツァルトが好きだったかがわかる名曲だと思っている。
その中で、第1楽章のテンポがあまりにも違いすぎる曲も珍しいが、少なくともallegroを感じさせないものはいかに巨匠であっても、「モーツァルティアン」としては聴くに値しないと思っている。ワルターやベームだとしても。そこで今回選んだのは、サヴァリッシュでした。さて5番の楽器編成:フルート1,オーボエ2,ファゴット2、ホルン2,弦楽5。楽章テンポは、(1)Allegro(2)andante(3)menuete&tiro allegro (4)allegro 。ハイハイもう答えは出てますね。文字通りモーツァルト40番ト短調交響曲まんまです。29番K.201の優雅さを備えた第1楽章、モーツァルトのピアノ協奏曲の緩徐楽章のような優しくかつ仄暗さを持つ第2楽章、40番K.550のオマージュとも言える第3楽章、変幻自在の終楽章。魅力的な作品です。
サヴァリッシュのメリハリのある構成、ドレスデンの木管群の美しさ、この曲にぴったりです。


2024年2月10日土曜日

マーラー 交響曲第2番「復活」_小澤征爾


 https://www.youtube.com/watch?v=rLt9tyCH4t4

1995年6月14日、長崎浦上天主堂にて行われた,「小澤 征爾 平和への「復活」コンサート」小澤征爾指揮,新日本フィルハーモニーによる,マーラー「復活」、(メゾソプラノ)フローレンス・クィーヴァー、(ソプラノ)キャスリーン・バトル。オーケストラ・メンバーには友情参加としてボストン交響楽団員,シカゴ交響楽団員が加わり,合唱は,コンサートのために特別編成された「長崎復活コンサート合唱団」並びに「東京オペラ・シンガーズ」,「成城合唱団」を視聴。安らかにお眠りを。

2024年2月9日金曜日

マーラー 交響曲第6番「悲劇的」_ラトル

 マーラー 交響曲第6番「悲劇的」、若きラトルとベルリン・フィルの初共演(1987年ライブ)にて聴く。2002年にシェフに就任する15年前の貴重な一枚。2.3楽章は、アンダンテ・スケルツォの順番。2018年、ベルリン・フィル退任ラスト・コンサートもこの6番、順番はアンダンテ・スケルツォでしたね。



2024年2月3日土曜日

サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」_オーマンディ

 本日カミさんは、実家に帰省。一人で大音響で聴きたい曲がある。サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 op.78「オルガン付き」、オーマンディ、フィラデルフィア管弦楽団、(Or)エドワード・パワー・ビッグス<1962年:録音>。オーマンディの18番とも言うべきこの曲の2度めで、当時、人気を博していたエドワード・パワー・ビッグスをオルガニストに招いての録音。グレゴリオ聖歌「ディエス・イレ」を循環主題にしたこの曲のドラマチックさと、主題が変わっても裏で細かい音型を刻みながら動き続ける部分が妙に心を揺さぶられる。第1楽章後半で静かなオルガンの響きに導かれ登場する弦楽群の調べの美しさも捨てがたい。第2楽章、フィラデルフィアサウンドの真骨頂。地柄強い弦楽群、跳ね回る木管群、そしてサン=サーンスならではの、ピアノのIN。美しい弦楽器の調べが静かにながれ、低弦群がおさめるといよいよ後半部、劇的なオルガンの響き、水面のきらめきのような4手のピアノの循環主題。ハリのある金管群。緊張感のあるフーガと牧歌的な木管群の主題が交互に現れながら、その中を循環主題が壮大なコラールのように奏でられていく。フィラデルフィア管は、全く弛緩せず壮麗さを保つ。はい、名盤です。



2024年1月28日日曜日

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」_モントゥー

 ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」、モントゥー;ウィーンフィル<1957年録音>を聴く。

颯爽たる第1楽章、咆哮と悲しみの第2楽章、うねりの第3楽章、そして瑞々しい終楽章。モントゥー爺さんの生命力あふれる「英雄」。抜群の安定化です。さて、モントゥーの第1楽章コーダ部分でトランペットが途中で消える部分がある。これは、コンセルトヘボウ管との演奏もだ。実はベートーヴェンの時代は、トランペットではよく聴く高音が出せなかったらしく、途中から他の楽器にバトン・タッチするように書かれたものらしい。モントゥーはそれを忠実に行っているのだ。実に面白い。


2024年1月20日土曜日

モーツァルト レクイエム_イッセルシュテット

 モーツァルト「レクイエム」、イッセルシュテット;北西ドイツ放送交響楽団・合唱団(1952年録音:THARA)を聴く。

リーザ・デラ・カーザ – Lisa Della Casa (ソプラノ)
マリア・フォン・イロスヴァイ – Maria von Ilosvay (コントラルト)
ヘルムート・クレープス – Helmut Krebs (テノール)
ゴットロープ・フリック – Gottlob Frick (バス)
イッセルシュテットならではの緊迫感のある硬質な仕上がり。錚々たるソリストを揃えての隠れた感動の名盤。


2024年1月19日金曜日

シューマン 交響曲第3番「ライン」_コンヴィチュニー

 有給休暇につき、シューマン 交響曲第3番 変ホ長調 Op.97「ライン」,コンヴィチュニー:LGO<1960年録音>にて聴いてます。

そういえば、先週の日曜劇場「さよならマエストロ」の主題曲、予告編からこの「ライン」かと思っていましたが違いました。
挿入曲も当該ドラマではあまりクラシック音楽は使用されてませんでした。残念!!
ちなみに、この「ライン」以外では、
ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「狩り」、
バグリー:行進曲「国民の象徴」
ベートーベン:交響曲第5番「運命」のみ。
いずれも演奏として登場しただけでした。
さて、コンヴィチュニー:LGOの「ライン」ですが、くすんだ弦楽群、ホルンも古色騒然、これこそがこの曲のイメージの音。どこかの帝王みたいにピッチをギリギリまで上げて、大吟醸なみに磨いてしまうと良さが損なわれてしまんですわ。そしてスーパーインテンポな堂々たるコンヴィチュニーの凄み。重厚にして壮大。仄暗く底光りのする渋いオーケストラの響き。好きです。




2024年1月3日水曜日

ブラームス 交響曲第1番_ボールト

 2024年、毎年恒例ブラームス 交響曲第1番での聴き始め。今年の選択は、エイドリアン・ボールト;ロンドンフィルハーモニー管弦楽団(1972年録音)。

ボールトの音楽性に惚れたメニューインがコンサートマスターとして参加。もちろん第2楽章のソロも担当している。

重厚感あるただただ正確なアーティキュレーションで響く冒頭主題が素晴らしい。提示部をリピートしている珍しい録音でもある。あくまでインテンポで進む無骨なブラームスが光る。