2017年1月29日日曜日

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番_グリュミオー

今朝は、定番中の定番にして最高峰といえるグリュミオーのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲から「3番 ト長調 K.216」を取り上げてみよう。アルテュール・グリュミオー:コリン・デービス+ロンドン交響楽団(1964年録音)。
ちなみにグリュミオーには1950年代にパウムガルトナー指揮によるウィーン響との旧盤(mono)があり、こちらを推す方もいるが、史上最高といわれたヴィブラートが磨き抜かれたステレオ盤の当盤で。この3番は、じつはグリュミオーの戦後間もないパリ・デビュー曲でもあります。
「シュトラスブルク協奏曲」というあだ名をもっていますが、「トルコ風」で有名な5番よりも私はこの3番がお気に入りだ。
2番からわずか3か月のちに書き上げた3番でモーツァルトは格段の成長を見せたと言われています。管楽器パートの重要性、ヴィオラやチェロの独立性などヴァイオリンとトゥッティの掛け合いだけの典雅な曲風からの脱皮です。これは、もう冒頭の30小節を聴いただけで明確です。その第1楽章の主題は、「羊飼いの王様(Il re pastore)K.208」の3曲目のアミンタのアリアの冒頭から引用されています。春が待ち遠しくなるワクワクとした主題。そしてヴァイオリン。キレとコクのあるグリュミオーの美音をいきなり堪能することができるでしょう。
第2楽章 ニ長調のAdajioは、まさに「癒し」の極致。弱音機を付けた弦楽パート。チェロとコントラバスのピッチカート。オーボエからフルートへ転換しての音彩(こんな言葉があるかわしらないが)の転換。そして天上からの音とかと思われるグリュミオーの奏する甘美なメロディーライン。ここでは誰もが優しい気持ちになれるはず。
第3楽章は、フランス風味のAllegro。しかし、陽気で伸びやかな旋律は、途中でト短調へ変わる。モーツァルトの得意とするところ。この変化がまた聴くものを惹きつけるのだろう。中間部はチャーミングなAndanteとAllegrettoがある。これも魅力の一つ。色々な仕掛けを満載した1曲である。
さて、第1楽章の主題で引用されている、「羊飼いの王様(Il re pastore)K.208」からアミンタのアリア「"Aer tranquillo e dì sereni"」をyoutubeから張っておきましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=apFtTPwg9NI
そして、グリュミオーの3番もyoutubeから。
https://www.youtube.com/watch?v=5jXNlWhaUE0



2017年1月21日土曜日

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番_エマール盤&フライシャー盤

おはようございます。今朝は、ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58 を、聴こう。
フラシャー:セル+クリーブランド管(1959年録音)とエマール+アーノンクール:イギリス室内管弦楽団(2002年録音)と4番お気に入りの2枚を取り出して聴いています。
フライシャー盤 第1楽章は、「上善如水」という言葉がぴったり。
フライシャーのピアノは一音一音がしっかりしていながら、流麗で繊細だ。まさに何者にも逆らわず流れゆく水の如しである。
セルが創り出す第2楽章の出だしの弦楽の決然とした響きが、とにかく私的には「No.1」のためはずせない。それに応えるフライシャーの、そこはかとない音がいい。
エマール盤は、とにかくエマールの美音。そしてどことなく温かみのある音がいい。全集が、知る人ぞ知る名盤(5番は??)であるが、とくに2番とこの4番が好きでついつい聴いてしまうのだ。



2017年1月15日日曜日

ドイツ・レクイエム 19

月に1度は聴きたくなるブラームス「ドイツ・レクイエム」シリーズ。第19回目となります。
①クレンペラー②サバリッシュ③ヤルヴィ④ジュリーニ➄セル⑥コルボ⑦アーノンクール⑧ケーゲル⑨ロバート・ショウ⑩アクサンチュス⑪コッホ⑫ヘレヴェッヘ⑬シノーポリ⑭クーベリック⑮バレンボイム⑯レヴァイン⑰ケンペ⑱マゼール
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今年初となる第19回は、アンセルメ:スイスロマンド管、アグネス・ギーベル(Sp)、ヘルマン・プライ(Br)(1966年録音)です。
冒頭から感じるのは、暖かみと慈愛に溢れた演奏であるということ。ゆっくり目のテンポでコーラスも語り掛けるように。
それは、第2曲に入っても変わらない。
重々しく歌われる変ロ短調の冒頭から
「So seid nun geduldig, lieben Brüder, だから今は耐え忍びなさい、愛しい兄弟よ」の「変ト長調」へ転調された場面での優しさに、それを特に強く感じることができるであろう。
この第2曲において、テンポをうまく揺らしながら、まるで物語のように展開されてゆくアンセルメの数学者としての構成力には脱帽です。
第3曲。ドイツレクイエムと言えば、やはりプライです。
この演奏でのプライのモノローグは、哀歌そのもののような声の色彩をもつ。やはりプライの独唱はいつ聴いても素晴らしい。
第4曲では、この曲が舞曲であることを知らしめてくれる極めて明確な1拍目の使いかたが如何にもアンセルメらしさを感じる。
第5曲。ソプラノのギーベルは、音量は他に譲るものの天上から歌いかけるような甘い美声はさすがだ。この2人は1960年チェリビダッケ盤でも競演している。
第6曲。冒頭、アンセルメはここでも深刻さを排除しているように思える。金管群もティンパニーも荒々しさを微塵も感じさせず、大フーガへ突入する。人によっては少し物足りなさを感じるかもしれない。ラストのリタルダントにみられように「賛歌」への強いこだわりを感じさせる表現方法であろうか。
第7曲。ドイツレクイエムは、1個の人間が様々なドラマ(人生)を営んだ後に、哀しみの死を迎える中で神の祝福を受けるというブラームスらしい構成となっていると思われる。(救いと報い)
その終着点において、どこまでも優しくハートを感じさせるのが、アンセルメの演奏ではないだろうか。一聴をお勧めします。


2017年1月3日火曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲第14番_バレンボイム


新春に相応しいのは、モーツァルトのピアノ協奏曲。
1968-1974年に録音された若きバレンボイム(ピアノ&指揮バレンボイム:イギリス室内管弦楽団)のキラキラしピアノタッチが魅力の
演奏を聴いています。
滅多に紹介されない14番 変ホ長調 K.449 をご紹介。
ウィーンで独立し、自作の演奏会を開くために最初に作曲された曲であり、弟子のバルバラ・プロイヤー嬢(ザルツブルグ宮廷連絡官の娘)に捧げられた曲です、モーツァルト自身が初めて自作の目録を作り始めた最初の曲です。
プロイヤー家は、かなり作品代をはずんでくれたようです。
(ちなみに17番もプロイヤー嬢のために書かれた作品です)
14番では、編成は弦楽5部、オーボエ2本、ホルン2本、ファゴット1本と小編成です。
特異のユニゾンで始まる決然とした冒頭の主題があちこちに登場しながら、ピアノのアルペジオ中心に柔らかいメロディを弦楽に支えながら展開してゆきます。
第2楽章アンダンティーノは、モーツァルト得意の緩徐楽章。
アリアのような優しいメロディは、何時聴いても心安らぎます。
バックに流れる弦楽のサポートも美しいです。
第3楽章は、軽快なアレグロ。少しフーガ風の掛け合いをしながら、チャーミングに変奏していきます。ピアノが踊りながらフィレーナを迎えます。
バレンボイムの甘さを含んだピアノの音は柔らかく、いかにもウィーンぽさを表現していてGOODであります。

2017年1月1日日曜日

2017年 迎春 ブラームス交響曲第1番_テンシュテット


あけましておめでとうございます。
よき新春をお迎えのことと、お喜び申し上げます。
2月18日が楽しみですね。
今年もブラームスとモーツァルト中心での投稿になりますが、
宜しくお願いいたします。
年の初めは、もちろん ブラームス 交響曲第1番 からです。
クララ・シューマンへの手紙に「Hoch auf’m Berg, tief im Tal, grüß ich dich viel tausendmal!」(高い山から、深い谷から、君に何千回も挨拶しよう)とある第4楽章のアルペンホルンの「EDCG」が年初に響き渡り、フィナーレの明るい未来へのブラームスの「歓喜の歌」が勇気を与えてくれるでしょう。
テンシュテット:北ドイツ放送交響楽団(LIVE:1981年ではないかと)で聴いていきましょう。
テンシュテットのブラ1も多く録音されていますが、一番秀逸だと思っています。
第1楽章、冒頭の8分音符のティンパニーの厚み、寂寥感を漂わせるNDRの弦楽群。直線的で決然としたテンシュテットのリズム。
第2楽章は、テンシュテット独特の歌わせっぷりに重厚感のある弦楽群がぎりぎりまで弾ききります。ヴァイオリンのソロも甘さを抑え引き締まった音でブラームスの孤独感を表現しているようです。
第3楽章は、ブラームスのメニエット、スケルツォの典型的3拍子を用いない独特のグラツィオーソの楽章。色めくように木管が遊びまわる色彩感。メリハリをつけたテンシュテットの真骨頂。
そして最終楽章、62小節に向けてドラマチックに追い込んでいく。
クレッシェンドするティンパニーのド迫力、ピチカートの明確さ、低弦のうねりと金管の咆哮。どれもテンシュテットならではの情熱的なフィナーレ。ブラボー!!