2019年2月24日日曜日

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」_コンヴィチュニー

無性に「田園」が聴きたくなる。この曲の私の第一優先は、低弦楽器の深みと重量感。選んだのは、コンヴィチュニー:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管(ベートヴェン交響曲全集、1959-16年録音)低弦楽器は、右位置に配置されどこまでも深く重量級だ。
第1楽章、まろやかなオボーエの基本動機の中、厚みのあるコントラバスの濃いフレージングとチェロの優しい響きが幸福感をもたらす。低重心ながら統制のとれた弦楽群の音の運びが東ドイツの風格だろうか。
第2楽章、テンポはゆっくり。「もさい」という人もいるだろう。しかし、素朴な弦楽の響きの中に、古めかしい木管群が戯れるように遊ぶ様は、大自然の優しい顔に触れているようだ。ファゴットの音がまたいい。
第3楽章、愚直なまでのスタカートの刻みの中でゴシック仕立ての舞曲が繰り広げられる。第2主題のオーボエ・クラリネットの甘さも忘れてはならない。
第4楽章、嵐は、地を這うような響きを持つコントラバスの音とともに襲ってくる。管楽群の鋼鉄の塊のような稲妻。襲ったかと思う間もなく過ぎ去ってゆく。しかしコントラバスの地鳴りはおさまらない。
第5楽章、素朴な弦楽群が繰り広げるクーライゲン、第2ヴァイオリンの優しさが嬉しい。変奏部では、第4変奏のファゴットとチェロの何と甘いこと。そしてコーダは、神への祈りだろうか。最後までコントラバスの低音に支えられたいぶし銀の音場に身をゆだねながら、ゲシュトップホルンの最終音を迎える。
感謝!!



2019年2月9日土曜日

メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」_コンヴィチュニー


メンデルスゾーン、実は第5番目の交響曲、交響曲第3番イ短調 Op.56 「スコットランド」を聴く。コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管(1962年録音)。メンデルスゾーンが佇んだ「ホリルード寺院」の絵画とともに<ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール作>。
この序奏の弦楽群の音の素晴らしさは何だろう!哀愁漂う木管群をささえる、木肌感がありながら寂寞としたヴァイオリン群、深みと表情の豊かさを持つ低弦群。ノンビブラートがもたらす音の質感が、スコットランドの荒涼とした冷たさを感受させる。豊潤なコンヴィチュニーの一面を垣間見る(聴くヵ)ことができる。5分足らずの2楽章も面白い、バグパイプに通じるペンタトニック(「ソ」と「シ」抜き)のクラリネット。疾走感のあるこの楽章も好きだ。
第3楽章Adagio、翳りのある旋律は、やがて優しいまどろみへ変化してゆく。ピチカートに支えられゲヴァントハウス管の生真面目なヴァイオリン群の音質が、歌謡風になりそうなこの旋律に格調をもたらしてる。そしてコンヴィチュニーの巧みなルバートだけが、この旋律を艶っぽく歌わせる。
終楽章、イ短調。ここは、コンヴィチュニー、ゲヴァントハウス管の真骨頂だ。ティンパニーの勇壮さに乗せて時折見せる管楽群の咆哮。深みのある低弦群。中音域の厚みのあるオーケストレーション。もうすでにブラボーだ!終わりなきと思われた嵐のような音の波は寂しげなヴァイオリンの旋律で終息を迎え一瞬の全休符。そしてコーダ、テンポを落として6/8拍子になり、低弦が新しい旋律をイ長調で大きく歌う。この唐突でありながら意外性を持つ回転劇のような展開にあっけにとられながら一種の幸福感を感受。最高の一枚だ!