2021年1月29日金曜日

ブラームス 交響曲第4番_イッセルシュテット

 手兵「北ドイツ放送交響楽団」とハンス・シュミット・イッセルシュテットのブラームス交響曲集より交響曲第4番ホ短調Op.98を聴く(1973.5.21ライブ録音)。彼はこの1週間後の5/28に亡くなっているので、まさに「白鳥の歌」というべき演奏。

冒頭の弱起(4拍目)から揃って始まるヴァイオリンの集中力。テンポは中庸、これと言って甘さもないがこのシンフォニーの持つ「幽愁」さをさりげなく醸し出す。優しい木管が登場するとその香りが更に増してくる。第2主題、舞曲風のメロディーから少しテンポを落とし、低弦の響きが脳裏を支配する(ここ好き)。展開部、徐々に悲劇性を高めながら、弦楽群はむせび泣き終結部へ。
第2楽章、フリギア旋法の朗々としたホルンの響き、その抑圧された雰囲気をクラリネットの経過主題を経て縛りが外れヴァイオリンの音色が一気に解放しくれる。そして旋律的短音階の後に現れるチェロ第2主題の何と美しいことか。これは、のちに再現部で弦楽8重奏として重厚さを増す。第3楽章、2拍子のスケルツォ。イッセルシュテットは、比較的遅めのテンポ決然と進んでいく。そしてトライアングル・コントラファゴットの登場。端正でいて悠々たるもの。それでいて厚みのあるオーケストレーション。白眉の終楽章、バッハ カンタータ「主よ、われ汝を仰ぎ望む」BWV.150の終曲にあるシャコンヌに惹かれ、ロ短調ミサ第17曲「Crucifixus」のホ短調の通奏低音に影響を受け、低声部ではなく上声部に扱うというとてつもない変奏曲(30)を仕上げた。冒頭のトロンボーンの響きは、黙示的だ。第4変奏の悲し気なメロディーがあの有名な第12変奏のフルートソロへと誘う。再現部、トローンボーンが天上に向かって響き安らぎに中でフルートが優しく囁きかける。しかし束の間、再び黙示的な響きが流れると音楽は一変。まるで暗闇に向かって落ちてゆくかのようだ。「運命」の3連符が畳みかける。そしてブラームスは救いを求める我々の意を無視するかのように短調のままこの曲を終結する。隠れ名盤とさせていただきます。

2021年1月23日土曜日

ブラームス 交響曲第2番_ハイティンク

 ハイティンク、コンセルトヘボウ管によるブラームス交響曲&協奏曲集より、交響曲第2番ニ長調OP.72を聴く(1973年録音)。余談であるが、ジャケットにもロイヤルの名が入っているが、正式には、「ロイヤル」の称号がついたのは、1988年。よって録音時<1970-1980年>には、アムステルダム・コンセルトヘボウ管が正しい。その点、レニーのマーラー2回目の録音=1.4.9番はいずれもアムステルダム表記でよろしい。横道にそれたが、これは70年代の最高の2番であろう。馥郁たるヘボウ管の管楽器群が2番のもつ陰陽の色彩の豊かさを十分に表現している。第1楽章、冒頭のまろやかなホルンと凛としたフルートの見事な組み合わせ。それに続く弦楽群のシルキーな美しさ。第2主題のチェロの柔らかな音色。決然とした展開部の緊張感。言うことなし。第2楽章もコンセルトヘボウの良さを堪能できる。速度はもう少し遅いのが好みだが、下降旋律のチェロの憂愁感。孤高のホルン。会話のような第2主題の木管と弦楽の受け継ぎ。それぞれの役割の明確さが伺える。第3楽章、純朴なオーボエ、優しいチェロのピチカート。テンポが倍加した時のゆるみのないアンサブル。見事。終楽章、低弦の厚みを膨らませながら中庸のテンポで進んでいく。金管群はどこまでも品性を保ち、木管群は色彩豊かに、ティンパニーも出しゃばらず、エンディングも過度なアッチェランドをせず、ハイティンクの統率力と堅牢さが滲み出る一枚。



2021年1月12日火曜日

メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」_ミュンシュ

メンデルスゾーン 交響曲第3番イ短調Op.56「スコットランド」、ミュンシュ:ボストン交響楽団(1959年録音)にて聴こう。第1楽章、序奏、ミュンシュとしては予期せぬ哀愁感。深みをもち表情豊かに謳いあげる。しかし、一旦ドラマチックの至芸に達したミュンシュは止められない、グイグイとテンポをあげながら進む。低弦群の圧が攻撃性の度合いを増す。しかしときおり出てくる木管の悲哀はくっきりと浮かび上がるから不思議だ。コーダに至ってはもう嵐そのもの。どうおとしまいをつけるのか?なるほどやはりそこまでテンポを落とすか。
第2楽章も快速。ペンタトニックのクラリネットに合わせて疾走してゆく。ティンパニーが少しついていけず。しかしミュンシュはお構いない。一気呵成の高速カウンター。
第3楽章、歌謡的なヴァイオリンが優しく歌う。しかしテンポは速めで感傷的ではない。第2主題からは決然とした男らしさが滲み出る。ティンパニーがミュンシュのドラマチック性を盛り上げる。
終楽章、冒頭の低弦の残響が耳に残る。そしてグイグイ感のテンポ。心象風景を吹き飛ばす筋肉質なオーケストレーション。コーダは堂々した入りから、想定通りの武闘派な締め。賛否はあるだろうが、「スコットランド」のイメージを覆すミュンシュ親分の魅力たっぷりな1枚。


2021年1月2日土曜日

ブラームス 交響曲第1番_コンヴィチュニー

 恒例、年初の1発目視聴はこれ。ブラームス 交響曲第1番ハ短調Op.68。今年は、コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管(1962年録音)にて。その揺るぎない歩み、決して煽らず、焦らず、堂々たる王者の風格。こうした王道にて1年を過ごしたいものである。