2020年4月8日水曜日

ベルリオーズ 幻想交響曲_クーベリック



ベルリオーズ「幻想交響曲 OP.14(H.48)」クーベリック;バイエルン放送交響楽団(1981年ライブ)にて聴く。これは、意外な取り合わせ。
ヨッフムを継いだ後のバイエルンを急成長させたクーベリック【78年まで首席指揮者】との相性は、退いた後でもやはり本物であった。【79-81年は首席指揮者不在】
第一楽章、テンポはゆっくり目。木管に続く弦楽の揺れ、コントラバスの重厚感、「イデー・フィクス」に突入してもその唸る弦楽群の強めのボーイングが主人公の憂鬱を顕す。
クーベリックがかなり振幅を聴かせドラマチックに構成するが、バイエルンは重心が低く浮ついたところが全く見えないのは流石だ。17年間のコンビの成せるバランスか。
第二楽章、ポルタメントが若干気になるが、情感を込めたワルツの展開。弦楽群は、ピチカートにも余念がなく一音一音が美しい。後半のテンポ早目。木管で思い切りためを作ってのエンディング。
第三楽章、アダージョの緩徐楽章。「田舎の夏の夕方、彼は遠くで2人の羊飼 いが笛でお互いに呼び合っているのを聴く」。ステージ上のイングリッシュ・ホルンと、舞台裏 のオーボエによる、空間的な遠近法が楽譜に指示されてるのだ。中間部の美しい弦楽と恋人の主題後のおどろおどろしい弦楽の使い分けは見事。遠雷。ここは、打楽器をリズム楽器としてではなく、「和音楽器」として使う ベルリオーズの真骨頂だ。バイエルンのティンパニーは図太い。
第四楽章、少しゆっくり目で決然とした出だし。トランペットのバランスも「ちょうどいい」。クーベリックはここでは、かなり冷静だ。低弦が効いててどっしり感がある。
終楽章、「サバトの夜の夢」。このライブ盤の秀逸性はこの楽章にある。サバトとはヴァルプルギスの魔女の宴会のことで、4月30日から5月1 日にかけての夜に行われるという。 「恋人の旋律が聴こえてくるが、今やグロテスクで卑しい踊り。彼女は悪魔の宴に加わる」。小クラリネットによって「恋人の主題」が姿を見せるが、下品な表情に。彼女も化け物になっているのだろうか。金管群の強固さ、バリバリ度、鐘の音もかなり陰湿だ。テューバなどで吹奏される『怒りの日(ディエス・イレ)』もおどろおどろしい。フレーズ事に厚みをつけながら徐々に加速感を増してゆく。そして一気呵成に終幕を迎える。かなりお勧めのライブ盤である。

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