2016年5月8日日曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲12番&18番_リリー・クラウス

今日でGWも終わりですね。
今朝の一枚。モーツァルト ピアノ協奏曲第12番 イ長調 K.414 &18番 変ロ長調 K.456です。
モーツァルトの女流ピアノスト言えば、まずクララ・ハスキル そしてリリー・クラウスの名前が出てくることでしょう。
今朝は、ハスキルに後れること8年後に生まれたハンガリー人(国籍はオーストリア)のリリー・クラウスとピエール・モントゥー:ボストン交響楽団との演奏で楽しみます。
実は、リリー・クラウスはヴァイオリニストのシモン・ゴールドベルクとの演奏旅行中の1942年 ジャワ島で終戦まで、日本軍の捕虜となっています。当時の今村均司令官はクラウス一家を丁重に扱ったと言われています。「抑留された西洋人、また捕虜の慰安の為、慈善演奏会を開いて欲しい。」今村均司令官の、この申し出をクラウスは喜んで受けました。今村均と言う軍人の寛容で人間味を感じさせるエピソードは多いのですが、これもその一つに数えられるでしょう。クラウスは、後年1963年に日本でリサイタルを行っています。クラウスはジャワ島での体験について、日本を批判する言葉を生涯発していません。「戦争の悲惨な体験によって地獄を知った分、天国の素晴らしさを音楽で歌えるようになりました。」「抑留を強いられた中でも、親切にしてくれた日本人がいました。私は日本に悪感情を持ったことなど一度もありません。」「今、神の恵みで、過去の暗い雲は取り払われ、私はあなた方の国に再び戻る期待で、深く喜ばしい感動に満たされております。」と<多胡吉郎著「リリー・モーツアルトを弾いて下さい」河出書房新社より>
さて、ピアノソナタで一世を風靡したクラウスですが、コンチェルトでは、さほど恵まれた演奏を録音されていません。結構、今では無名の指揮者やオーケストラの録音が残っていますが。
しかし当CDでは、かのピエール・モントゥーとの躍動感のあるピカピカの演奏を聴かせてくれています。粒だつような透明な響き、モントゥーに引っ張られて力強く刻むリズムの弾む音、弱音の可愛いらしさ、魅力いっぱいです。
12番は、ウィーンに引っ越しが決まったばかりのモーツァルトが作った曲ですから、第1楽章はその新天地でのウキウキ感が表現されウィーンらしい甘く柔らかで優雅な曲想のアレグロです。
第2楽章アンダンテは、安らぎに満ちたパッセージが流れますが、当年1月に亡くなったクリスティャン・バッハのオペラ「誠意の災い」序曲が主題に借用されているのです。その死を悼んでの事と推察できます。中間部での短調がその悲しみを表現しています。
第3楽章アレグレットは、流れるようなアルペジオとトリルが魅力の軽快なロンドです。12番を堪能できる1枚です。
18番は、何といっても緩徐楽章ですね。変ロ長調の平行移調であるト短調で書かれています。「フィガロの結婚」でバルバリーナが歌う「カヴァティーナ」に似た主題を含む5つの変奏曲から構成されています。切なくも暗い序奏に続く、ピアノのソロ。短調と長調を彷徨いながら展開する変奏曲の妙はモーツァルトならではです。
クラウスのピアノが一番発揮されている楽章でもあります。
かなり長くなりましたネ。今朝も有難う「モーツァルト」であります。

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