2017年3月5日日曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲第18番_ハイドシェック



ハイドシェックのモーツァルト ピアノ協奏曲集から、第18番 変ロ長調 K.456を聴こう。
ハンス・グラーフ指揮 ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団。(1994年録音)
20番台の1960年代ヴァンデルノート盤ではなく、円熟のハイドシェックの演奏である。この曲は、ウィーンの盲目のピアニスト、マリア・テレージア・フォン・パラディス(25才)のために作曲されたものである。ハイドシェック盤には、きちんと「パラデュース」の名が記載されている。
実は、彼女は同時期のモーツァルトのライバル宮廷音楽家レオポルド・コジェルフ(ボヘミア出身)の弟子だというから、アマデウスも無頓着にも程がある。
この如何にも胡散臭そうな名前のコジェルフ、実はサリエリよりも多く、モーツァルトの2倍の俸給を得ていたらしく、モーツァルトの死後に宮廷音楽家の地位に就いたのである。出版者でもあったがベートーヴェンなどは酷評しているようだ。
全く横道にそれてしまいました。
まず、18番第1楽章は、まさに春の暖かなウィーンの街を闊歩したくなるような旋律で始まります。(行ったこともないが)
ハイドシェックの音質は歳を重ねてもキラキラしています。そして、一音一音の切れ味にその才能を感じます。
この第1楽章は、単に快活なだけでなくモーツァルトお得意のちょっと沈みがちの翳りの短調部分が含まれており、ハイドシェックのピアノは自在と言える巧さでその濃淡を弾きわけています。カデンツァは、極めて打ち込み風の流れるような旋律。でもここでホール中が息をのむ風景が浮かんできそうです。
次に第2楽章ですが、これが白眉です。変ロ長調の平行調であるト短調。そうモーツァルト宿命の調性で書かれています。
冒頭の弦楽群で始まる、悲しいメロディーは耳にこびりついて離れません。そしてピアノが同じ旋律を8分音符で叩き始めた瞬間にモーツァルトの世界に引き込まれてしまう。如何にも単純なメロディーでありながら、複雑な半音階が現れるごとに不思議な雰囲気に陥る。これは「フィガロの結婚」でバルバリーナが歌う「カヴァティーナ」に似た主題を含む5つの変奏曲から構成されているのです。短調と長調を彷徨いながら展開する変奏曲の妙はモーツァルトならではです。
最後に第3楽章、ピアノから始まるドミソ好きのモーツァルトの「狩り」のテーマだ。(変ロ=シ♭・レ・ファか)。
この楽章は、8分の6拍子ですが、管楽器が4分の2拍子に、またピアノだけが4分の2拍子になる面白い中間部があります。こんなことを既にこの時代に取り入れているあたりが天才!!
ハイドシェックのカデンツァは、コルトー張りの相変わらずの天衣無縫。(弟子ですから)本当に楽しんでモーツァルトを演奏しているようです。18番もお勧めですね。

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