2007年10月27日土曜日

2007年10月25日木曜日

渾身の調性 ~ モーツァルトを語る 第35弾

第35弾は、ウィーン四重奏曲第6番目の曲「弦楽四重奏曲第13番 ニ短調 K173」である。
先に紹介した15番と同じ調性である。ト短調は、モーツァルトにとって「宿命の調性」と謂われる。
ニ短調は、勝手に「渾身の調性」と呼びたい。
このK173に始まり、K341(キリエ)、K421(弦楽四重奏曲 第15番)、K466(ピアノ協奏曲第20番)、K621(レクイエム)がそれだ。さてK173だが、1773年の作品であるが、これ以降10年弱、彼は「弦楽四重奏曲」を封印しているのも興味深い。少年モーツァルトは、未だ我がフーガ、ハイドンの域に達せずと封印したのだろうか??
さて第一楽章は、アマデウスのテーマとも言うべき三度の装飾音を伴う下降音で始まる。
そしてオクターブ上のシンコペーションで我々は、モーツァルトの内面の悲しみを知る。その後に続く力強い反転上昇。そこに若きモーツァルトの悲しみを打ち破る強い意志を覗きみる。(ちなみに最初の4小節、これは「魔法の笛」のパミーナのアリア で見つけることができる。)まさに「渾身」。
しかしこれだけでは終らない。第4楽章のフーガがまた魅力的だ。チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリンが半音で下降しながら順番に登場し絡み合う。そして最後はなんとニ長調の和音で終るのだ。さして複雑ではないこのフーガの恰好よさのため一度聴くといつも何度も何度も繰り返して聴いてしまう私がそこにいるのです。

それでは、お聴きください。
mozart_13_k.173 (クリック)。

2007年10月10日水曜日

第2ヴァイオリンだって ~ モーツァルトを語る 第34弾

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第34弾はウィーン四重奏曲から「弦楽四重奏曲 第10番 ハ長調 K.170」をとりあげよう。
敬愛するKenさんも好きな曲だ。第1楽章に変奏曲が使われている珍しい曲である。モーツァルトが崇拝する、かのハイドン先生の影響をもろに受けているといわれているこの時代のモーツァルトの四重奏曲の3曲目の曲です。私が好きなのは、第3楽章(Un poco Adagio)だ。
冒頭の第1ヴァイオリンはなんて美しいのだろう。そしてそれにもまして、提示部から展開部へのヴィオラと第2ヴァイオリンのソロ。そして再び第1ヴァイオリンへ引き継がれる哀愁を帯びたメロディーライン。伴奏へ移った第2ヴァイオリンの何気ない1回だけの3度のハモリ(36・37小節目)。もう降参です。

それでは、聴いてください。
_k.170 (ウィーン四重奏曲3).mp3(クリック)

2007年10月6日土曜日

優雅に ~モーツァルトを語る 第33弾

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結構披露宴に参加したので、そんな場面にピッタリ曲を第33弾に選ぼう。
「セレナーデ 第6番 ニ長調 K239  セレナータ・ノットゥルナ」である。
モーツァルト二十歳の時の作品である。この曲は、バロック時代の合奏協奏曲のようで、3つの楽章からなる。ティンパニーの登場が特徴的だ。アインシュタインも「音の響きと旋律の点で、モーツァルト初期の作品中最も魅惑的な曲である」とやはり高く評価している。約12分と短い曲であるが、今日は、その中で最も祝宴にあいそうな第二楽章を紹介する。

それでは聴いてください。
_k.239 'Serenata Notturna' 2. Menuetto - Trio(クリック)

2007年9月19日水曜日

隠れた名品 ~ モーツァルトを語る第32弾

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第32弾は、1984年4月に作曲された「木管とピアノのための五重奏曲 変ホ長調 K452」です。
実はベートーベンが同じ楽器編成、同じ3楽章編成、同じ調性で、曲を作っています。聴き比べると好みにもよりますが、明らかにモーツァルトの天才性だけが浮かび上がります。この曲はモーツァルト最初の自作演奏会のための曲です。ピアノ・コンチェルトK450(15番)とK451(16番)と共に初演されました。 ピアノ(クラーヴァイア)・パートはモーツァルト自身が演奏したとか。楽器編成は、ピアノとオーボエ、クラリネット、ホルン、バスーンです。全く有名ではありませんが、父レオポルドに宛てた手紙の中で、「生涯最高の作品」と書いてるほどの曲です。聴き所は、見事な音の溶け合いでしょうか。
第1楽章は長いラルゴの序奏がついている(20小節/2分くらい)。これが美しい。木管の掛け合いをピアノのアルペジオが支えます。そこには得もいえぬ安心感があります。
第2楽章も美しい。第1音から間違いなくモーツァルトの世界に引き込んでくれます。ピアノと木管の絶妙な調和が見られます。
第3楽章ですが、冒頭はまるでコンチェルトのようです。最後にガデンツァがあるのも面白いです。

それでは、第2楽章をお聴きください。mozart_k.452 - II Larghetto (クリック)

2007年9月3日月曜日

憂愁 ~ モーツァルトを語る 第31弾

Photo 第31弾は、「弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調 K421」。
ハイドンセット2番目の曲だ。日本語には「憂愁」という言葉がある。この曲にぴったりの言葉ではないだろうか。
第一楽章のSotooVoceで始まる第一主題ヴァイオリン その2音で我々は、短調という澱みの中へ引きずり込まれる。そして、その「澱み」の水底でチェロが支えていることを知る。
第二楽章は、唯一の長調(ヘ長調)。でも明るくはない。安らぎの中での背中合わせの「不安」といった曲想。
第三楽章の中間部のトリオは秀逸だ。「他に例がないピチカート」に支えられたヴァイオリンの独奏は美しい。そして終楽章の変奏曲。シチリアーノのリズムの主題は、こうして座って聴いていても、追いかけられ逃げているような気分にさせられる。変奏曲もすごいの一言。スラーでありながらうごめくヴァイオリン。不思議なシンコペーションの掛け合い。ヴィオラのソロ。一転して美しい長調のメロディー。3連音符のフォルテシモ。てんこもりとはこのことか。

それでは、第1・第4楽章をお聴きください。
k.421-01-Allegro (クリック)k.421-04-Allegretto Ma Non Troppo(クリック)

2007年8月12日日曜日

慈愛~モーツァルトを語る 第30弾

Cl400記念すべき第30弾は、「クラリネット協奏曲 イ長調 K622」です。
第26弾で五重奏を先に紹介しましたが、こちらも最上の名曲です。
K622は、モーツァルトが最後に完成させた作品です。この曲は言わずと知れた{アマデウス 旋律の王様 イ長調}。この曲を聴くとモーツァルトにとってト短調が宿命の調性なら、イ長調は天与の調性であると感じます。私にとってK622はこう聞こえてなりません。
第一楽章は、モーツァルトが今まで生きてきた人生を振り返って音にしたもので、第ニ楽章は、神はすべてを、そしてもうすぐ召される自分をもこのように暖かく包み込んでくれるだろうと感じた音、第三楽章は、天上での自分の姿を想像した音であると。自分が最も愛したクラリネットでそれは演奏される。もう言葉は要りません。

それでは聴いてください。
アントニオ・ペイ:AAM Hogwood の演奏です。
k.622 - 1. Allegro(クリック)
k.622 - 2 .Adagio(クリック)
k.622 - 3. Rondo(クリック)

2007年8月5日日曜日

超セレナーデ ~ モーツァルトを語る 第29弾

Posthorn_3 モーツァルトのセレナーデは編成も形式も様々である。13本の管楽器によるアンサンブル7楽章もの(K361)ソナタ形式の4楽章もの(K525)などである。

そんなセレナーデ群からの初登場は何の迷いもなくセレナーデ 第9番 ニ長調 K320 「ポストホルン」である。ポストホルンとは小さなホルンで、単に管をくるくると巻いただけのものもあれば、ロータリー・ヴァルヴがついたものもあります。その名の通り郵便配達人が使用していました。15世紀にフランス、ヴェネツィアなどで郵便制度が始まり、郵便配達は、その到着と出発を知らせるのに小型の曲型もしくは環状のホルンを使っていました。17世紀頃には、ニュルンベルクのトランペット制作者の徒弟はその楽器を作ることをまず最初に許されたといいます。はじめポスト・ホルンは管の長さが短かく、1重程度しか巻かれていなかったために第1倍音と第2倍音を用いたオクターヴの動きしかありませんでした。しかし、管の長さが長くなり第6倍音程度まで出せるようになって、様々な音型が生まれました。 これが第6楽章の第2トリオに使用されているためこの愛称がついています。

このセレナーデは、全7楽章で交響曲(1・2・5・7)と協奏曲(3・4・6)を一緒に聴ける壮大なものである。まず、第1楽章から驚かされる。壮麗なアダージョをもち、それに続くアレグロはロッシーニを髣髴させる音楽だ。第3・4楽章のフルートとオーボエの掛け合い(対話)もすばらしい。そして第5楽章のニ短調のアンダンティーノ。「出た~」 何故この場に短調が!?でもこれが実にいい。そして壮大なフィナーレ。盛りだくさんの音楽を一度に楽しみたいならこの曲だと思っている。

それでは、第1・5楽章をお聴きください。
k.320 'Posthorn' - I. Adagio - Allegro (クリック)
k.320 'Posthorn' - V. Andantino (クリック)

2007年8月2日木曜日

外は台風 中はDivertimento ~モーツァルトを語る第28弾

第28弾は、「ディヴェルトメント 第07番 ニ長調 K.205」です。
今、宮崎は台風5号で、外は吹き返しで大荒れです。
久しぶりに早く家に戻ったので今夜はMozart三昧。とりあえず「Divertimento」。
この曲は、ヴァイオリン、ヴィオラ、ホルン二つとバスという編成です。第一楽章は短いラルゴから。ハイドンチックですが、実に美しい旋律です。それに続くは軽快・勇壮なアレグロ。続く可愛らしいメヌエットです。 第三楽章のアダージョがまた泣かせます。そんな時はホルンとバスーンはお休み。美しい旋律を弦鳴楽器だけで奏でられます。この章だけ「旋律の王様」イ長調です。次の第四楽章メヌエットは後半の3連符がうならせます。 トリオではホルンと弦鳴楽器が掛け合いをします。フィナーレ第五楽章はプレストで終わりです。単身赴任の夜を慰める一曲です。

それでは聴いてください。
K.205 (クリック)

2007年7月24日火曜日

ヴァイオリン・ソナタのフーガ ~ モーツァルトを語る第27弾

久しぶりの更新である。実は、7月より宮崎に転勤。
転勤・転居にてモーツァルトも聞く暇がないくらいだった。今日は久しぶりにゆったりした時間をすごしている。 さて久々の第27弾は「ヴァイオリンソナタ第37番 イ長調 k402」です。 第1楽章冒頭の主題。あれっ ドン・ジョバンニのメニュエット!? そして第2楽章 フーガ アレグロ・モデラート。クラヴィーア・ソナタには、フーガが多く使われているが、ヴァイオリン ソナタでフーガを使っているのはこの曲だけある。しかしこの曲は完成していない。残念だ。63小節以降はM.シュタードラーによる補筆である。(全91小節) この曲は、如何にもバッハかというフーガだ。この曲を知らない人にたぶん「この曲はだれの作品?」と聴けば大方は「バッハ??」と答えるであろうと思う。 モーツァルトは後期、フーガに完全にはまってしまいましたね。ジュピターのような壮大なフーガもあれば、この曲のような可愛らしいフーガも存在する。不思議な今日この頃だ。

それでは、第二楽章をお楽しみください。
k.402 - 2.Fuga, Allegro Moderato(クリック)

2007年6月9日土曜日

クラリネット さあどっち ~ モーツァルトを語る第26弾

Photo_15第26弾は、クラリネット。クラリネットは現在オーケストラで使われている楽器の中でも最も新しく登場した楽器です。
さてどっちにするかモーツァルト好きには悩みどころです。
K581・K622(ともにアマデウス旋律美の王様と勝手に名づけているイ長調)どちらも不滅の名曲だからです。(第26弾まで出ないのがおかしいが)これらの曲をモーツァルトに書かせたのはボヘミアに近い国境の町ブルックに生まれた名人クラリネット奏者アントン・シュタトラーである。モーツァルトは1781年から死ぬまで10年間ウィーンで暮らしていたが、シュタトラーとは特別に仲の良い友人同士であったようだ。借金で苦しむモーツァルトから借金をして返済もしていないかったという話もあるくらいだ。そんな友の為にクラリネットの為の名曲を書いた。

第26弾は、「クラリネット五重奏曲 イ長調 K581」通称「シュタトラー五重奏曲」。こちらにしました。K622もいずれ登場させます。結局選べないのです。
さてK581は1789年にA管(写真右の大きい方)のクラリネットのために書かれています。<B管が変ロで、A管がイで半音低い>K581は4つの楽章があります。弦楽四重奏を相手にクラリネットがソリストのように活躍します。また、クラリネットが「従」になったりもします。3オクターブの広い音域で魅力をあますことなく繰り広げます。
第一楽章アレグロ、第二楽章ラルゲット、第三楽章メヌエット、第四楽章アレグレット・コン・ヴァリアチオーネ で、先にも書きましたが第一楽章は弦楽四重奏をバックにあたかもクラリネット・コンチェルトの様相です。ラルゲットはクラリネットがそれはそれは美しいメロディーを気高く歌い上げます。メヌエットは優しく美しいメロディーです。トリオは二つあり、イ短調・イ長調と調性がガラッと変化します。第2トリオでは再びクラリネットが牧歌的雰囲気で活躍します。第四楽章は主題と変奏曲6曲という形式です。快活な第4変奏に続く番号の振られていない第五番目のアダージョは優雅な旋律、さらに番号なしの第六番目のアレグロで華やかに曲を閉じます。

一番のお気に入りは、第3楽章Menuettoの「TrioⅠ:イ短調」です。実はここではクラリネットは登場しない。弦楽四重奏です。思わず涙がこぼれそうになるくらいです。楽譜も載せておきます。↓
5813trio2
5813trio3
というわけで、音はMenuettoにしようと思いましたが、私にはとても選びきれません。
すべて貼り付けます。ご堪能ください。
k.581 - I. Allegro(クリック)
k.581 - II. Larghetto(クリック)
k.581 - III. Menuetto(クリック)
k.581 - IV. Allegretto con variazioni(クリック)   

2007年6月6日水曜日

アルビノーニじゃなくて

おっさんになるとアルビノーニのアダージョを聴いてドラマの主人公にはなれない。

今はコダーイのアダージョがいい。

50年近く生きているとこんな曲を聴きたい夜もある。

Grumiauxのヴァイオリンで。kodaly_adagio(クリック)

2007年6月2日土曜日

ファゴットとチェロ?~モーツァルトを語る 第25弾

Fairf03_2 第25弾は、ヴァイオリンソナタを除けば数少ない二重奏から「ファゴットとチェロのためのソナタ 変ロ長調 K292」。たぶん二重奏というのは以前紹介したヴァイオリンとヴィオラの二重奏(k423.k424)と2つのバセットホルンによる二重奏(k487)くらいではないかと思う。
取り上げた理由は、低音楽器の管弦による二重奏で極めて珍しいからです。ファゴットとピアノをたしなむバイニルン選帝侯侍従長フォン・デュルニッツ男爵(ミューヘンの音楽愛好家)の依頼により作られた1775年の作品です。チェロは、2.3楽章で細かく動く場面もありますが、ほとんど伴奏であると思っていいでしょう。ちなみにファゴットとはイタリア語で「束」を意味することみたいですね。ファゴットの音はいつも私を森の奥深いところに連れていってくれる気がします。非常に短い曲ですが、それなりに味わいがあります。ご存知のようにモーツァルトにはチェロが主人公で活躍する曲がありません。その時代にモーツァルトが曲を作りたいと思わせる名演奏家がいなかったのでしょうね。残念でなりません。

それでは第二楽章(Andante)をお聴きください。k.292 - 2.Andante(クリック)

2007年5月27日日曜日

洗練~モーツァルトを語る 第24弾

14 第24弾は、大司教の館のターフェルムジーク(食卓音楽)として作曲された6曲(K213、240、252=240a、253、270、289=271g)の作品の中で第5番目の曲である「ディヴェルトメント 第14番 変ロ長調 K.270」をとりあげる。

オーボエ2、ホルン2、ファゴット2という簡単な編成。管楽器のみでモーツァルトほど洗練された音楽を作り上げた人はいないだろう。センスの格を感じる。自筆楽譜には、〈アマデーオ・ヴォルフガンゴ・モーツァルトの6声のディヴェルティメント第5番 1771年1月〉と書かれている。4楽章編成の15分弱の曲です。第1楽章はアレグロ・モルト。ファゴットの8分音符の上でオーボエが軽やかにメロディーを歌い上げるところがお気に入りです。

それではお聴きください。mozart_14_k.270.mp3(クリック)。

2007年5月14日月曜日

ライトアップ~マスカーニで

今夜はライトアップして、庭のバラ達を眺める。
こんな時にマッチする曲は、マスカーニ作曲「カバレリア・ルスティカーナの間奏曲」。贅沢なひととき。mascagni_cavalleria_rusticana_intermezzo (クリック)。

こんな美しい間奏曲をもつオペラとはどんなにロマンチックなんだろうか。
「カバレリア・ルスティカーナ」なんて如何にも美しい響きではないか。

残念。真実は違う。題名は訳すと「田舎の騎士道」という意味だし、物語も不倫と横恋慕と決闘の話。

主人公トゥリッドゥが軍隊に行っている間に恋人のローラは、さっさと馬車屋のアルフィオと結婚してしまいます。愕然とするトゥリッドゥですが、サントゥッツァと恋に落ち婚約します。すでに結婚していながら、嫉妬するローラはトゥリッドゥを誘います。まだローラに未練のあるトゥリッドゥは、サントゥッツァがいながらもローラと逢瀬を重ねます。どうしてもトゥリッドゥが戻ってこないことからサントゥッツァは嫉妬に駆られ、アルフィオにトゥリッドゥの不倫を告げてしまい、アルフィオは怒り狂います。

ここで間奏にこの名曲。

このあと、教会から人々が出てきて居酒屋で皆が飲んでいるときに、トゥリッドゥはアルフィオに決闘を申し込みます。敗れて死ぬことを予感したトゥリッドゥは母親にさりげなく別れを告げに帰り、やがて意を決し決闘場へと向かう。「トゥリッドゥが殺された」という女の悲鳴が2度響き、村人の驚きの声と共に・・・・・幕 とまあこんな話し。ほんまかいなぁ。でもわかっていても名曲は名曲ですね。自分勝手にロマンチックな想像で聴いてればいいのです。

2007年5月12日土曜日

疾走しないト短調~モーツァルトを語る 第23弾

Salzburg2 第23弾は、「疾走しない悲しみのト短調群」と勝手に名付けている曲達の中の1曲「Mozart - ヴァイオリンソナタ 第36番 K.380の第二楽章」を紹介する。
K.380自体の調性は、変ホ長調だかこの第二楽章は、ト短調 4/3 アンダンテ・コン・モートである。短調のモーツァルトが、モーツァルトという途方もない天才の一面である事実は誰も否定できない。明るく晴れやかで春風のように心地よいセレナードやディヴェルトメントにも、感情のこまやかさが小さな波のように幾つも幾つも訪れ、心を洗い戯れてくるピアノコンチェルトの緩徐楽章にも、不思議と現れるモーツァルト的悲哀の音たちは、それはそれで堪らなく美しく大好きだが、こうして第一音から投げかけてくる短調の悲しみのメロディーは心にぐさっとくる。たぶんモーツァルトがそうした一面を知らず知らずのうちに耐え切れず漏らしているからではないかと思えてならない。

それではお聴きください。mozart_36_k.380 - 2(クリック)

2007年5月6日日曜日

チャルダッシュ

最近TVCMを見ていて妙に耳に残る曲がある。日立ハイビジョンテレビWOO、黒木瞳が登場するCMに使われている、「ヴィットリオ モンティー」の「Csardasチャルダッシュ」だ。ご存知フィギュアスケートの浅田真央ちゃんの、フリー演技の曲目である。チャルダッシュとは「酒場風」という意味らしい。ハンガリーの民族舞曲で、Lassanというゆったりとした導入部とFriskaという急激な2/4拍子のリズムで構成されている。オリジナルはマンドリンだ。そういえば昨年も「トゥーランドット」が一世風靡した。フィギアの影響力はすごい。

2007年5月4日金曜日

疾走の始まり~モーツァルトを語る 第22弾

Photo_8 第22弾は、久々の弦楽四重奏曲の登場。
ミラノ四重奏曲の5番目の作品「弦楽四重奏曲 第6番 変ロ長調 K.159」です。緩・急・急という楽章構成を持つ特徴的な作品です。
いわゆるディヴェルトメント風ですね。
第一楽章はアンダンテというゆったりとしたテンポで始まり柔らかく温かみのある音色です。何故か9小節目まで第1ヴァイオリンが登場しない。そしてこの9小節目の第2ヴァイオリンとヴィオラのシンコペーションは「らしい」としか言いようがない。
さて、この曲の肝は、なんといっても第2楽章(5分30秒から)でしょう。モーツァルトにとって始めての短調でのソナタ・アレグロ。まさに疾風怒濤的傑作といえよう。かの「疾走するかなしみ」は原点はここにあるような気がする。調性は宿命のト短調。ひたむきに駆け抜けるという言葉がぴったりくるだろうか。

それでは聴いてください。。mozart_06_k.159(クリック)。

2007年4月30日月曜日

ヨハン・クリスチャン・バッハ~モーツァルトを語る 第21弾

Jcbach ヨハン・クリスチャン・バッハは少年期のモーツァルトに最も影響を与えた作曲家だと言われている。ロンドンで新時代の予感に触れ衝撃を受けた。J.C.バッハは当代隋一の旋律法の大家である。(大バッハの末っ子)8歳のモーツァルトが彼に師事できたことは幸いであったといわれる。様々な旅によってこうして天才モーツァルトが育まれていったのだろうと思う。K333など、その影響を受けた曲は多くあるが、今日はまさに、J.C.バッハの曲を編曲した「3つのクラヴィーア協奏曲 K107」を紹介する。標題には「アマデーオ・ヴォルフガンゴ・モーツァルト氏により協奏曲に編曲されたジョヴァンニ(ヨハン)・バッハ氏の3曲のソナタ」(イタリア語)と書かれている。これら3曲の協奏曲は、ヨハン・クリスチャン・バッハの《クラヴサンまたはピアノフォルテのための6つのソナタ(メクレンブルク公エルンスト殿下に献呈)》(作品5)の第2番、第3番、第4番をほぼ忠実に協奏曲に編曲したものである。
題名どおり3曲あるが、音は、1曲目(J.C.バッハのピアノソナタ作品5の2から)の2 Andante ト長調 2/4 をお聴きください。
可愛らしさがたまらず好きです。kv107_no_1_in_d_2. Andante (クリック)。

2007年4月26日木曜日

溌剌~モーツァルトを語る 第20弾

Violin 第20弾は、「ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド ハ長調 K.373」といこう。

この曲もアントーニオ・ブルネッティと結びついている。1781年の作品だ。ウィーンにある大司教の館での演奏会の為に用意され曲である。映画「アマデウス」でモーツァルトが登場するあの館だ。ちなみに映画で使われている「グラン・パルティータ」は、その3年後が初演だからこの時は、作曲はされていたが演奏はされていない。まあ映画だから許します。
さて編成は、独奏ヴァイオリン、オーボエ、ホルン2、弦5で5分程の曲だ。実に溌剌として聴いていて心も明るくなる。独奏をフルートで演奏されることもしばしばだ。(そのときはニ長調で1音上げている。)出だしは、K465のアレグロの主題によく似ていてさわやかで甘酸っぱい。モーツァルトらしい1曲ではないだろうか。

それでは、聴いて下さい。mozart_k.373 (Grumiaux)(クリック)。

2007年4月15日日曜日

2つ目のアダージョ~モーツァルトを語る 第19弾

K000393 第16弾にて「ヴァイオリン協奏曲 第5番 第二楽章 Adagio」を紹介した。
実は、この第二楽章は、翌年1776年にもう一つ作曲されている。
それが、第19弾「ヴァイオリンのための中間楽章アダージョ ホ長調 K261」である。
もともと先の「イ長調協奏曲」は、ザルツブルク宮廷楽団の楽長であったアントーニオ・ブルネッティのために書かれたのだが、その中間楽章が、ブルネッティにはいささか荷が重いと、急拠新しくこのアダージョを仕上げて入れ替えたものではないか?と言われている。調は同じホ長調、テンポは2/4が4/4へ。オーボエがフルートへと変わっている。弱音器をつけたヴァイオリンと管楽器に先導されて独奏ヴァイオリンが同じ主題を奏して始まる。中間にロ短調の部分があるが、全体におだやかなホ長調の曲調が実に美しい。わずか8分程ですが、美しさに陶然とする時間が流れていきます。

それでは、ちょっと珍しいですが、コンドラシン指揮(モスクワ響)レオニド・コーガン(Vn) 1969年のライブにてお聴きください。mozart_k.261(クリック)。

2007年4月13日金曜日

心を休めよ~モーツァルトを語る 第18弾

991025 第18弾は、「ピアノ協奏曲第15番 変ロ長調 K450」。
なんと名曲揃いのピアノコンチェルトにもかかわらず、第1弾の「17番」第4弾の「20番」、もっとも好きな「23番」以来の登場となった。
1784年、28歳の時の作品だ。この年に、14番から19番までの6曲ものピアノコンチェルトを作曲している。
15番は、映画「アマデウス」で第3楽章が使われている。ザルツブルグから出てきた父レオポルドと再会する前、市場をワイン片手に飲みながら闊歩するシーンに使われているのだ。20番台の円熟した名作群の始まりは、この15番からではないだろうか。シンホニックな調べの確立がなされている。モーツァルト自身もこの15番以降の6曲を「大協奏曲」として以前のコンチェルトと区別している。そしてピアニストとしては、16番とともに「どちらも汗びっしょりになる曲」だと父宛の手紙に書いている。
1楽章、3楽章はなんて軽快にして楽しいのだろう。思わず心が沸き立ってくる。
そして2楽章(11:08あたりから)のやすらぎのメロディー。静かに心を休めるには、この曲が最高だ。

それでは、聴いてください。mozart_15_k.450 (クリック)

2007年4月7日土曜日

奇跡の始まり~モーツァルトを語る 第17弾

20060514_75013 第9弾で、14歳の時の作品 弦楽四重奏曲「ローディー」を、第13弾で10歳の時の作品「教会ソナタ」を紹介したが、第17弾は、もっと前、8歳の時の作品「クラーヴァイアとヴァイオリンのためのソナタ」だ。K6~K9、K10~K15まで10曲ある。
今日は後半6曲について語る。
1764年の秋にロンドンで作曲され、翌年1765年1月18日の日付で英国王妃シャーロットへの献辞を添えて「作品III」として出版された。新全集ではチェロを含めた三重奏曲として分類されている。アインシュタインは、「この6曲がショーベルトやクリスチャン・バッハの影響を受けているものの、一曲ごとにますますモーツァルト自身を示している。モーツァルトは彼の仮のモデルをスプリングボードとして利用する。彼はいっそう高く飛び、いっそう遠くへ達する」と書いている。
これらは、最近ではフルートとともに演奏されることが多い。正しくはK6~K9を「ヴァイオリン声部付クラヴサン・ソナタ」K10~K15を「ヴァイオリンまたはフルート声部付、チェロ助奏自由のクラヴサン・ソナタ」という。クラブサンとは、フランス語「CLAVECIN」で、英語で言うハープシコード、イタリア語でチェンバロのことだ。
音は、K13の第2をお届けします。K14のカリヨン風も面白いし、K15のすでに円熟か?と思わせるメロディーも捨てがたいのですが、やはり8歳にして、心の底から語りかける哀愁のメロディーに惹かれたというこで、此の曲を選びました。

それでは、グリュミオーのヴァイオリンで聴いてください。mozart_k.13 - 2 (クリック)

2007年4月1日日曜日

美しきチェロのアダージョ

Cello_sideview こんな穏やかな春の日には、柔らかなチェロの音が聴きたくなる。
(もっとも寂しい秋の夕暮れもだが)春の日の似合う曲を選ばねば!!。

ハイドン チェロ協奏曲1番2番の緩衝楽章 adagioはどうだろう。かくも美しきチェロの響きを耳にできる喜び。第1番が発見されたのなんと1961年。200年以上も眠っていた曲です。

それでは、2曲ともお聴きください。1- 2.Adagio (クリック)2-2.Adagio(クリック) 。

2007年3月31日土曜日

疾風怒濤

Photo_7 久々にCDを購入。
ハイドン 疾風怒涛期の交響曲集(第45.46.49)_トン・コープマン指揮:アムステルダム・バロック管弦楽団 <1000円>である。何故かこのところハイドンのCDに手が伸びる。さてコープマンはオランダ人。ハープシコード(チェンバロ)奏者、オルガン奏者でもある。グスタフ・レオンハルトの弟子である。コープマンの音には生気がある。もともとバロック音楽にどっぷり漬かっていたが、その後古典派音楽にも登場するようになったそうです。スーパーバリュー20シリーズ集めてみようかと思う。
私はハイドンの交響曲は、番号後半のパリ交響曲シリーズやロンドン交響曲シリーズよりも、この疾風度怒涛期の方が、情熱的で好きである。当CDは、3曲とも短調である。疾風怒涛期の交響曲の中に短調の作品が6曲もある。100曲近いハイドンの交響曲で11曲しかないことを思うと、特別な時期であろうか。副題も44番「哀悼(悲しみ)」45番「告別」49番「受難」その他「嘆き」など悲劇的ものが多い。44番はハイドンが最も愛した交響曲で、自分の葬儀では、「3楽章のadagioを演奏して貰いたい」と語ったとされている。弱音器をつけたヴァイオリンが奏でる優しいメロディーが魅力だ。45番「告別」は、最終楽章で、出番が終わった奏者:第1オーボエ,第2ホルン,ファゴット,第2オーボエ,第1ホルン,コントラバス...順々に席を立って(譜面台の照明を消して)退出することになっている。終盤のコーダでは4部に分かれたヴァイオリン,ヴィオラ,チェロだけになる。チェロ,第2ヴァイオリン,ヴィオラという順にいなくなり,最後は第1ヴァイオリン2人だけになり,消えるように曲が終わるという面白いトリックが隠されている。
そして49番「受難」。ため息と敬虔、悲しみと追われ、あぁ珠玉の1曲。天才モーツァルトが如何にハイドンの影響を受けていたのかわかる1枚ではなかろうか。この時期の短調の交響曲群とモーツァルトのト短調交響曲については、kenさんのブログ、ウィーン旅行後の交響曲~小ト短調とハ長調が興味深いので最後に紹介させてください。

それでは、交響曲第49番へ短調Hob.;49「受難」からの第1楽章 Adaigoをお聴きください。

adagioーpassion (クリック)